2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12460001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堤 伸浩 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00202185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉羽 洋周 株式会社日立製作所, ライフサイエンス研究センター, 主任研究員
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Keywords | 葉緑体 / リボソームタンパク質 / rpl16 / タンパク質輸送 / トランジットペプチド |
Research Abstract |
葉緑体ゲノムから核ゲノムへの遺伝子の転移機構を明らかにする目的で,全ゲノムの塩基配列が公表されたシロイヌナズナを用いて,核にコードされた葉緑体リボソームタンパク質庫伝子の網羅的な解析をおこなった。その結果,葉緑体ゲノムに残って機能している21個の遺伝子のうち,rpl2, rpl16, rpl20, rpl36は葉緑体ゲノム上に存在するが,核ゲノムにも相同配列が存在することが明らかとなった.これらの遺伝子は核ゲノムに転移している途中の段階である可能性があり,特に配列の保存性が高いrpl16の相同配列に関してさらなる解析をおこなった. 様々な生物種のRPL16とシロイヌナズナの核ゲノム上で見出した原核生物型RPL16のアミノ酸配列を用いて近隣結合系統樹を作成すると,原核生物型RPL16はシロイヌナズナの葉緑体RPL16と非常に近いことがわかった.このことから,原核生物型rpl16配列は葉緑体ゲノムから核ゲノムに転移してきたものであることを確認した.核ゲノム上の原核生物型rpl16の推定アミノ酸配列には,調べた範囲では適当な開始コドンを設定することができなかった.しかし,RT-PCRによってこの配列が転写されていることを確認した.さらに,コード領域での塩基配列の保存性が高いことから,この配列の翻訳産物が機能している可能性がある.もしこれが葉緑体で機能しているのであれば5'末端側にはイントロンとトランジットペプチドをコードする領域があるものと予想される.また,イネにおいてrpl16など9個の遺伝子を含む葉緑体ゲノム上の塩基配列約6.9kbが核ゲノムに転移していることがわかった.この配列は合計で23塩基の欠失,挿入,置換があるものの,その他の部位は葉緑体ゲノムと全く同じ配列である.この配列はシロイヌナズナで核ゲノムに転移した配列とは長さが大きく異なり,また遺伝子をコードしていない部分も非常に保存性が高いことから,イネとシロイヌナズナの分岐後,ごく最近になって核ゲノムに転移した配列であると考えられる.
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