2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12460001
|
Research Institution | THE UNIVERSITY OF TOKYO |
Principal Investigator |
堤 伸浩 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00202185)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉羽 洋周 株式会社日立製作所, ライフサイエンス研究センター, 主任研究員
|
Keywords | 葉緑体 / リボソームタンパク質 / rpl36 / タンパク質輸送 / トランジットペプチド / 水平伝播 |
Research Abstract |
様々な生物種のRPL36とシロイヌナズナの核ゲノム上に見出した原核生物型RPL36とで作成した系統樹によると、原核生物型RPL36は葉緑体の祖先種と考えられているシアノバクテリアから分岐したクラスター内に位置せず、他の細菌のRPL36に近いことがわかった。っまりこれは葉緑体ゲノム由来のものではないこと示している。ミトコンドリアのRPL36は同定されていないが、ミトコンドリアの祖先種と考えられているαプロテオバクテリアのリケッチャと哺乳類のミトコンドリアRPL36の系統樹内における位置を考慮すると、この原核生物型RPL36がミトコンドリアのRPL36であるとは考えにくい。このことから核ゲノムで見出された原核生物型RPL36は細菌からの遺伝子の水平移動によって獲得されたことが示唆された。この遺伝子の下流に緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を結合させたプラスミドを構築し、シロイヌナズナで発現させてGFPの細胞内局在を見たところ、GFPはオルガネラには局在しないことがわかった。また遺伝子内の位置の異なる2種類のプローブを用いておこなったノーザン解析の結果からこの遺伝子は転写されていることを確認したが、この転写産物から翻訳されるタンパク質はRPL36のC末端側に機能不明のペプチドが融合した構造をとることが塩基配列から予想された。これらの結果をあわせると、この原核生物型RPL36は現在の段階ではオルガネラ内でRPL36として機能しているとは考えにくいが、近い将来に機能しはじめるか、あるいはすでに他のタンパク質として機能しているという可能性がある。このように、原核生物型の遺伝子は、オルガネラゲノムから核ゲノムへの遺伝子の転移のみならず、他の原核生物から核ゲノムへの遺伝子の水平移動によっても獲得されることがわかった。このようなゲノム間での遺伝子の転移は進化の原動力となっていることが予想される。この遺伝子の転移機構そのものも、ゲノムの可塑性を維持するために高等植物が進化の過程で獲得し利用するようになった機能であると考えることができる。
|
-
[Publications] Arimura, S.: "A dynamin-like protein (ADL2b), rather than FtsZ, is involved in Arabidopsis mitochondrial division"Proc. Natl. Acad. Aci. USA. 99. 5727-5731 (2002)
-
[Publications] Ohtsu, K.: "ABA-independent expression of rice alternative oxidase genes under environmental stresses"Plant Biotechnol.. 19. 187-190 (2002)
-
[Publications] Saika, H.: "AOX1c, a novel rice gene for alternative oxidase ; comparison with rice AOX1a and AOX1b"Genes Genet. Syst.. 77. 31-38 (2002)