2001 Fiscal Year Annual Research Report
水稲子房における転流・転送系並びに蓄積系構造の組織・細胞学的解析
Project/Area Number |
12460007
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
松田 智明 茨城大学, 農学部, 教授 (50007788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新田 洋司 茨城大学, 農学部, 助教授 (60228252)
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Keywords | 電子顕微鏡 / 不完全登熟 / 胚乳 / 品質 / イネ / 高温 / ストレス / アミロプラスト |
Research Abstract |
本年度の研究実績は学会発表8報である。まず高温及び遮光条件での登熟が蓄積系である胚乳のアミロプラストの構造に及ぼす影響を詳細に検討し,高温登熟が小型のアミロプラストを,遮光が収縮程度の大きいアミロプラストを,それぞれ著しく増加させること,これらが米粒の白色不透明化を招き,品質低下に直結する要因であることを明らかにした。また,転流・転送系構造である背部維管束と珠心表皮の退化過程に及ぼす高温登熟の影響を詳細に解析し,高温ストレスが珠心表皮の退化を早め胚乳腹部のアミロプラストの異常による登熟不良を招くこと,さらに背部維管束の珠心突起部における栓物質の形成・沈着を促進して転流ルートの封鎖を早め,胚乳背側部のアミロプラストの異常と登熟不良を招き玄米品質の低下と不完全登熟粒の増加に直結することを初めて明らかにした。次に,一時的な高温と乾燥条件が水稲の登熟に著しい悪影響を及ぼすフェーン現象により増加した不完全登熟粒を詳細に解析し,アミロプラストの異常形態が多発し玄米品質が悪化していること,屑米率の増加の要因は登熟後期のストレスによる胚乳細胞の肥大成長の抑制とアミロプラストの増殖異常などに伴う玄米粒厚の減少であることを明らかにした。さらに,水稲の登熟問題の重要課題である,いわゆる強勢穎果と弱勢穎果の特徴について,出穂までの穎果の発育程度の差が最終玄米重を左右すること,弱勢頴果の子房では初期の胚乳細胞形成が遅延していることを示した。また,水稲玄米で認めたデンプン粒の分解と全く同様な分解像がコムギの胚乳でも認められることを明らかにした。
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[Publications] 岩澤紀生, 松田智明, 新田洋司: "水稲種子胚乳のアミロプラストの形態に及ぼす高温および遮光処理の影響"日本作物学会紀事(日作紀). 70・別1. 112-113 (2001)
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[Publications] 岩澤紀生, 松田智明, 新田洋司: "水稲子房における高温登熟障害の要因"日本作物学会関東支部会報. 16. 66-67 (2001)
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[Publications] 松田智明, 癸生川真也, 飯塚 清, 新田洋司: "フェーン被害を受けた水稲の不完全登熟粒(屑米)におけるアミロプラストの構造"日本作物学会東北支部会報. 44. 87-88 (2001)
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[Publications] 新田洋司, 岩橋雅夫, 根本善太郎, 松田智明: "イネの穂上位置を異にする穎果における籾殻および子房(玄米)の生長の差異"日作紀. 70・別1. 194-195 (2001)
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[Publications] 岩崎裕介, 松田智明, 新田洋司: "異なる窒素施用条件下で登熟させたコムギ子実胚乳の貯蔵物質蓄積に関する走査電子顕微鏡観察"日作紀. 70・別1. 114-115 (2001)
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[Publications] 岩崎裕介, 松田智明, 新田洋司: "登熟中のコムギ子実胚乳に認められるデンプン粒の分解"日作紀. 70・別2. 233-234 (2001)
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[Publications] 癸生川真也, 松田智明, 飯塚 清, 新田洋司: "フェーン現象被害屑米の胚乳構造"日作紀. 71・別1(発表予定). (2002)
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[Publications] 石丸 努, 松田智明, 山岸 徹: "水稲の登熟初期における子房の発達に関する光学顕微鏡観察"日作紀. 71・別1(発表予定). (2002)