2000 Fiscal Year Annual Research Report
根冠脱落細胞(Border cell)による土壌の摩擦抵抗減少效果の判定
Project/Area Number |
12460010
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
飯嶋 盛雄 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (60252277)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 茂紀 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00143404)
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Keywords | Border cell / 根冠 / 土壌の機械的抵抗 / 脱落細胞 / 粘液分泌 / 成長圧 / トウモロコシ / ストレス耐性 |
Research Abstract |
本研究では、根冠脱落細胞(Border cell)が土壌と根の界面に存在しクッションのような緩衝帯様の働きをするという仮説に着目した。すなわち、Border cellが担う生態的役割の一つとして、土壌と根の界面に生ずる摩擦抵抗は、根冠由来のBorder cellによって減少することを多面的に実証することを目的とした。研究代表者と分担者は、2000年7月〜8月にスコットランドに出張し、海外研究協力者とともに以下の実験を行った。それは、根冠を除去した根の生長圧を測定することによって、まず根冠組織がどの程度土壌の抵抗を減少させうるのかを定量的に求める実験である。柔らかい土壌条件下では、根冠除去区とインタクト区の根の生長速度と根の肥大程度には差を認めなかった。それに対して圧縮土壌の根冠除去区では、根の伸長速度はインタクト区のそれの約50%、また根端の肥大程度は同じく130%になった。すなわち、土壌の機械的ストレスによって根冠を持たない根がより大きな生長阻害を示す。次に、0.96Mpaの土壌抵抗を示した圧縮土壌中へ根を貫入させたところ、根の生長圧はインタクト区では0.31Mpa、根冠除去区では0.52Mpaであった。すなわちインタクト区の根が受けた抵抗(根の生長圧の反作用)は、金属探針で測定した土壌抵抗の約1/3であったのに対して、根冠除去区では1/2以上であった。一方、両区の根の生長圧を比較すると、インタクト区は根冠除去区の60%であった。すなわち、本実験で用いた土壌の機械的ストレス条件下では、トウモロコシ種子根の根冠は土壌の抵抗の約40%を減少させる働きを持つことが明らかとなった。これは根冠から分泌される粘液とBorder cellの両者の働きによるものと推定できる。今後、粘液とBorder cellのそれぞれがどの程度、土壌の摩擦を減ずる効果があるのかを定量する必要がある。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Iijima M.,Griffiths B,Bengough G: "Sloughing of cap cells and carbon exudation from maize seeding root in compacted sand"New Phytologist. 145. 477-482 (2000)
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[Publications] Pardales,Banoc,Yamauchi,Iijima,squibel: "The effect of fluctuations of soil moisture on root development during the establishment phase of sweetpotato."Plant Production Science. 3(2). 134-139 (2000)
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[Publications] Araki H,Hirayama M,HirasawaH,Iijima M: "Which Roots Penetrate the Deepest in Rice and Maize Root Systems?"Plant Production Science. 3(3). 281-288 (2000)
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[Publications] 森田茂紀,岡本美和,阿部淳,山岸順子: "圃場で栽培したトウモロコシの出液速度と根量との関係"日本作物学会紀事. 69(1). 80-85 (2000)
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[Publications] Bengough A G,Iijima M.,Barlow,PW: "Image Analysis of Maize Root Caps-Estimating Cell Numbers from 2-D Longitudinal Sections."Annals of Botany. (印刷中). (2001)
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[Publications] 森田茂紀,飯嶋盛雄: "根冠の形態と機能(その1)、(その2)"農業および園芸. 75(7)(8). 77-81,81-85 (2000)
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[Publications] 森田茂紀: "根の発育学"東京大学出版会. 194 (2000)