2003 Fiscal Year Annual Research Report
CAM型光合成における酸素感受性メカニズムの解明に関する研究
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12460011
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
野瀬 昭博 佐賀大学, 農学部, 教授 (80045137)
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Keywords | CAM / ミトコンドリア / 酸素 / りんご酸オキザロ酢酸シャトル / パインアップル / ベンケイソウ / 脱炭酸 / 種間変異 |
Research Abstract |
平成14年度においてパインアップル・ミトコンドリアにおいてはリンゴ酸・アスパラギン酸シャトルがCAM型光合成とリンクする形で機能していることが示唆されたために,その確認の実験を行った.結果は,パインアップル・ミトコンドリアはリンゴ酸・OAAシャトルを用いてリンゴ酸とOAAの相互転換系と関係していることがほぼ確定され,この系は,パインアップルのCAM型光合成のphaseIIIにおけるリンゴ酸の脱カルボキシル化をサポートする系として機能していることが示唆された.つまり,この系を用いてパインアップルのミトコンドリアはミトコンドリア・マトリックスでリンゴ酸を酸化し,結果として生じるNADHはATP合成をもたらし,さらに生じたOAAはミトコンドリアから細胞質へ輸送され,細胞質におけるPCKの基質として利用されるものと考えられ,このことはCAM型光合成の脱炭酸過程に新たな代謝過程の存在を示唆するものである. 次に,低酸素濃度に対する反応の種間差を検討する研究を行った.カトレア,デンドロビュウム・サクラ,デンドロビュウム・ブラナジェイド,コチョウラン,バンダはCAM型CO2交換を維持したが,アロエ,セイタカベンケイはCAM型CO2交換を消失した.PCK型CAMに類別されるアロエは低酸素感受性を示し,ME型CAMに類別されるラン類が低酸素感受性を示さなかったことから,CAMの低酸素感受性はサブタイプによるものではないことが確認されるとともに,単子葉植物と双子葉植物という視点からも分類できない可能性が示唆され,CAM型ガス交換の特性がSuper-CAMに近いほど酸素濃度に反応しない可能性が示唆された.
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[Publications] Hoang TKH: "Oxidation of substrates in Percoll-purified mitochondria isolated from Kalanchoe daigremontiana."Bulletin of the Faculty of Agriculture, Saga University. 89. 121-129 (2004)
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[Publications] 田原圭輔: "パインアップル及びセイロンベンケイソウにおけるRubisco活性と蛍光特性の日変化"日本作物学会紀事. 72(別1). 218-219 (2003)
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[Publications] 吉田隆之, 田原圭輔, 野瀬昭博, 東江: "パインアップル及びセイロンベンケイソウにおけるPEPC活性と蛍光特性の日変化"熱帯農業. 47(別2). 65-66 (2003)
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[Publications] Hoang TKH: "The respiratory properties and malate metabolism in Percoll-purufied mitochondria isolated from pineapple, Ananas comosus (L.) Merr."日本作物学会紀事. 73(別2)(予定). (2004)
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[Publications] 野瀬昭博: "CAM型光合成の酸素感受性の種間変異"日本作物学会紀事. 73(別2)(予定). (2004)