Research Abstract |
平成12年度は,以下の研究成果を得た。 1.都市農村混合空間における農地を対象として,農作物生産の場としての適性を評価し,優良農地の分布形態の解明を行った。今後,都市農地に求められる生産を多品目生産にあると仮定し,適性を,生産性と深い関連を持つ土壌条件から評価した。高い適性をもつとされた農地と,市街地の近接・転用状況を,GISによる定量的な解析を通じ明らかにした。結果,多品目生産適地と市街地は,市街化の影響が顕著な地域を中心に,近接して存在している。多くの多品目生産適地は,都市的土地利用に転用されたことが明らかとなった。これは,今後,都市農業を展開する基盤確保のためには,市街地に近接する農地の転用を制御する必要を示唆している。 2.都市農村混合空間における,緑地の景観保全上の作用解明の一環として,今年度は,沿道土地利用の違いによる,街路樹の印象の相違を明らかにした。具体的には,街路を走行する自動車内から撮影したビデオ映像を評価刺激とした心理実験を行い,評価刺激と印象との対応関係を把握した。結果,一般的に街路樹がもたらすと考えられている印象は,沿道土地利用状況との関係により,異なることが示唆された。今後は,同手法を用い,都市農村混合空間における農地景観を対象に,農地がもたらす印象を周辺土地利用との混合の様態との関係から明らかにする予定である。 3.市街地に近接して存在する水田が,隣接する市街地にもたらす気候緩和上の作用の解明を行った。具体的には,都市農村混合空間において,土地利用が変移する数本のトランセクトを設定した上で,気温の変動を測定し,水田が隣接市街地にもたらす気候緩和作用の発現域を明らかにした。結果,概ね水田から150m程度に近接して存在する市街地に気候緩和上の効果があることが確認された。また,既往研究の気候緩和モデルの都市近郊部への適用の有効性について検証を行った結果,その有効性が確認された。
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