2000 Fiscal Year Annual Research Report
カイコから発見した概日時計遺伝子BmClock,BmCry-α,-βの機能の解明
Project/Area Number |
12460025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋田 透 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (20202111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三田 和英 放射線医学総合研究所, 第2グループ, (研究職)サブグループリーダー (30159165)
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Keywords | カイコ / 概日時計 / 光周反応 / EST / ゲノム解析 / 転写因子 / 明暗周期 / ショウジョウバエ |
Research Abstract |
1.カイコのclock相同遺伝子 カイコのESTデータベースからショウジョウバエのclock遺伝子に相同な塩基配列を1個発見した。このcDNAの塩基配列を決定したところ、全長が7521塩基対であり、585アミノ酸残基をコードする完全なORFが認められた。推定アミノ酸配列はショウジョウバエCLOCKと33%の相同性があり、DNA結合に必要なbasic helix-loop-helixモチーフ、およびCYCLEタンパク質との結合に必要なドメインとされるPAS-1およびPAS-2ドメインに相当するアミノ酸配列が、ショウジョウバエのCLOCKと57〜80%の特に高い相同性を示した。そこでこのカイコの遺伝子をBmclk(Bombyx mori clock)と命名した。5齢幼虫の絹糸腺、脂肪体、精巣、卵巣、翅原基、脳、および培養細胞BmNにおけるmRNA発現量をRT-PCR法によって比較した結果、翅原基以外の組織に発現していた。続いて、同じRT-PCR法によって5齢幼虫の脳におけるmRNA量の日周変動を検討した。12時間明:12時間暗の条件で飼育した個体を用いたところ、脳のBmclk mRNAは、明期から暗期移行後に極大となり、暗期から明期移行後に極小とるよう日周変動を示した。 2.クリプトクロームに相同なタンパク質をコードするカイコの遺伝子 カイコのESTデータベースの検索により、培養細胞のcDNAの中にマウスのクリプトクローム遺伝子Cry-1に相同な配列を発見した。このcDNAの塩基配列を決定したところ、全長は4509塩基対であり、730アミノ酸残基をコードする完全なORFが認められた。推定されるアミノ酸配列はマウスのCRY-1に61%と高い相同性を示し、DNAとの結合に必要とされるアミノ酸配列や、コファクターであるMTHFやFADに結合するに必要な配列が特によく保存されていた。このカイコの遺伝子をBmCry-αと命名した。RT-PCR法により、5齢幼虫におけるBmCry-α mRNAの発現を調査したところ、翅原基以外の諸組織と培養細胞でmRNAの存在が認められた。また、ショウジョウバエのクリプトクローム遺伝子に相同な配列を探索したところ、BmCry-αとは異なるcDNAクローンを見いだした。このcDNAの塩基配列は1587塩基であり、308アミノ酸をコードするORFが認められた。推定されたアミノ酸配列は、ショウジョウバエのクリプトクロームと33%の相同性を示したので、この遺伝子をBmCry-βと仮称した。RT-PCR法による発現解析では、翅原基以外の組織と培養細胞でBmCry-β mRNAの存在が認められた。また、BmCry-α、BmCry-βとも夜間にmRNA量が多くなり昼間減少する傾向があった。
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[Publications] Hiroaki Abe,Fumi Ohbayashi,Toshiyuki Sugasaki,Mariko Kanehara,Tomoko Terada,Toru Shimada,Shinya Kawai,Kazuei Mita,Yasushi Kanamori,Masa-Toshi Yamamoto,Toshikazu Oshiki: "Two novel Pao-like retrotransposons (Kamikaze and Yamato) of the silkworm Bombyx mori and B.mandarina and the common structural feature of Pao-like elements."Molecular and General Genetics. (印刷中). (2001)
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[Publications] 嶋田透: "カイコのゲノム研究の意義,現状および展望[1]."農業および園芸. 75巻9号. 991-998 (2000)
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[Publications] 嶋田透: "カイコのゲノム研究の意義,現状および展望[2]."農業および園芸. 75巻10号. 1112-1116 (2000)