2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12460044
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
原島 俊 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70116086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 嘉信 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90161182)
西沢 正文 慶応義塾大学, 医学部, 講師 (20218150)
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Keywords | 酵母 / 染色体の分断 / 最小ゲノム |
Research Abstract |
生命科学が向かうひとつの方向は、ヒトを究極とする複雑な生命体を理解しようとする方向である。しかしその対極として、限りなく少ない遺伝子のセットを持つ"最小ゲノム生物"特に最小ゲノム真核生物とはどのようなものであるかを明らかにすることも、現存する多様な生命体を理解するための基盤的知見を得る上で重要な課題と考えられる。 申請者らは、染色体の自在な操作による酵母の新しい育種法を開発するため、染色体を任意の位置で分断する新しい染色体工学技術を開発してきた。この染色体分断技術を繰り返し行い染色体を次々と分断すれば、望みの長さの多数のミニ染色体から成る出芽酵母を作出できる。出芽酵母では、150kb以下の大きさの染色体は、細胞分裂時に高頻度で脱落することが知られている。従って、出芽酵母の染色体を多数に分断し、特定の培養条件下で培養することにより、その培養条件下での生存に不要な遺伝子を担う分断ミニ染色体を次々と除去することが可能であろう。本研究は、このアイデアの基に、申請者らが開発した染色体分断技術を応用して、世界に先駆けて「最小ゲノム真核生物」を創造し、それを通じて真核生物における生命の最小単位とはどのようなものか、そして、様々な環境条件で生物が生きていくためのゲノム構成はどのようなものであるかを明らかにしようとするものである。染色体分断技術は基本的には確立しているが、分断ベクターを繰り返し用いるための形質転換体の選択符号の問題など、いくつかの技術的問題が解決されなければ、多数の分断を行うことは困難である。そこで、平成12年度は、繰り返し使用可能な分断ベクターを構築し、その有効性を検討した。生体内では繰返し配列間の相同組み換えによって、その間に挟まれた介在配列が容易に除去される。また、S.cerevisiaeにおいては、薬剤5FOA耐性選択によって、Ura3^+からUra3^-株を容易に選択できる。これらの知見に基づきURA3選択符号がサルモネラ菌由来のhisG配列に挟まれたhisG::URA3::hisGカセットを分断ベクターに組み込み、これを利用して繰返し使用可能な染色体分断ベクターを構築した。これを用いて第8番染色体(590kbp)のYHR087w遺伝子座で分断を行ったところ、期待通り282kbpと295kbpに分断された。この株から5FOA処理によりUra^-クローンを取得し、次に第2番染色体のHSP26遺伝子座での分断を試みた。現在、Ura^+候補株について、実際に第2番染色体が分断されていることを確認している途上である。
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[Publications] Kunoh,I.,Kaneko,Y.,Harashima,S.: "YHP1 encodes a new homeoprotein that binds to the IME1 promoter in Saccharomyces cerevisiae."Yeast. 16:. 439-449 (2000)
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[Publications] Mizuno,T.,Harashima,S.: "Activation of basal transcription by a mutation in SIN4, a yeast global repressor, occurs through a mechanism different from activator-mediated transcriptional"Molec.Gen.Genet.. 263. 48-59 (2000)
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[Publications] Kunoh,I.,Kaneko,Y.,Harashima,S.: "Genetic characterization of rbt mutants that enhance basal transcription from core promoters in Saccharomyces cerevisiae."J.Biochem.. 128(4). 575-584 (2000)
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[Publications] Nakagawa,Y.,Sugioka S.,Kaneko,Y.,Harashima,: "O2R, a regulatory element mediating Rox-1p-independent O2 and unsaturated fatty acid repressions of OLE1, in Saccharomyces cerevisiae."J.Bacrteriol.. 183. 745-751 (2001)