2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12460072
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
野上 寛五郎 宮崎大学, 農学部, 教授 (10038242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 克彦 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 助教授 (50264099)
高木 正博 宮崎大学, 農学部, 助手 (70315357)
伊藤 哲 宮崎大学, 農学部, 助教授 (00231150)
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Keywords | 保存生態学 / ヤクシマサルスベリ / 絶滅危惧種 |
Research Abstract |
屋久島西部低地照葉樹林帯の山地渓流域において、ヤクシマサルスベリ(準絶滅危倶)の個体群を調査し、その現状と成立条件を明らかにした。 約62haの集水域の一次流路沿い(流下距離約1.2km、標高差約350m、実調査面積約15ha)に、450個体のヤクシマサルスベリの生育が確認された。個体の多くは渓床勾配の緩い下流部の堆積土砂上に成立しており、そのサイズ分布はL字型を呈していた。上流部や谷壁斜面では個体数が少なく大径個体は認められなかった。生存個体の7割は上層木の被圧を受けていたが、ほとんどは落葉性先駆木本による被圧であり、常緑樹の被圧下で生存する個体の比率は低かった。樹高は大径個体も含めて12m程度で頭打ちになっており、その原因の多くは幹折れによるものであった。これらの幹折れ個体は旺盛な萌芽による株構造を形成していた。 下流部に流路を横断する30m×30mのプロットを設置し、微地形および地表の状態を区分するとともに樹木位置、樹冠投影領域を調査した。ヤクシマサルスベリは流路内および低位段丘面で露岩率が高い場所に成立していた。これらの地表面では高位段丘面と比較してリターや草本植生による地表の被覆率が低く、他の樹種の成立密度も極めて低かった。プロット上層の林冠はイスノキやアコウ等の常緑広葉樹とセンダンなどの落葉広葉樹で構成され、ヤクシマサルスベリの樹冠は常緑樹の樹冠下を避けるように亜高木層を構成していた。 以上の結果から、1)この流域では比較的良好な状態でヤクシマサルスベリの個体群が維持されていること、2)ヤクシマサルスベリはある程度の耐陰性を有するが常緑樹冠の被圧下では生育が困難であること、3)強い萌芽性が個体維持に大きな役割を果たしていること、4)ヤクシマサルスベリのハビタットとして流路沿いに形成された堆積地が重要であり、更新初期条件がおそらく大規模撹乱に依存すること、5)とくに流路および低位段丘面では流水による弱度の撹乱を頻繁するため他の樹種が成立しにくく、ヤクシマサルスベリにとって有利な定着サイトになっていること、が推察された。
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