2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12460072
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Research Institution | MIYAZAKI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
野上 寛五郎 宮崎大学, 農学部, 教授 (10038242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 克彦 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 助教授 (50264099)
高木 正博 宮崎大学, 農学部, 助教授 (70315357)
伊藤 哲 宮崎大学, 農学部, 助教授 (00231150)
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Keywords | 保全生態学 / ヤクシマサルスベリ / 絶滅危惧種 / 屋久島 / 渓畔林 / GIS / 微地形 / ハビタット |
Research Abstract |
1.ヤクシマサルスベリ個体群の分布と構造について、以下のことを明らかにした。 1)海抜60m以上の渓流沿いに分布し、典型的な海岸植生には混生しない。2)基本的には照葉樹林域における落葉先駆木本パッチの構成種であるが、照葉樹林冠下にもある程度生育する。3)植物社会学的には、ギョクシンカ-スダジイ群集、ヤクシマアジサイ-スダジイ群集およびイスノキ-ウラジロガシ群集の渓畔型代償植生と認識できる。4)集水面積約1000ha以下の山地渓流沿いに成立し、ロウブおよび崖錐など堆積面上で密度が高い。5)個体群の成立は土砂移動を伴う低頻度の地表撹乱に強く依存する。6)個体の生残には弱度の高頻度撹乱による競争個体の消失が重要である。 2.ヤクシマサルスベリ個体の生育特性について以下のことを明らかにした。 1)萌芽性が高く、台風等による主幹の損傷後に幹萌芽を多数発生することで個体を長期間維持している。これは生育地の立地環境に適した生育特性である。2)根系がよく発達し、谷底での流水による表土浸食に対して耐性が高い。3)単葉の光合成特性の可塑性が高く、他の落葉先駆木本と比較して耐陰性が高い。3)最小繁殖サイズは胸高直径3cm、樹高4m程度であるが、開花には良好な光環境を必要とするため、林内での繁殖はほぼ不可能である。4)発芽条件として、良好な光環境を必要とする可能性が高い。4)以上の結果は、先駆的な発生でありながら高い耐陰性と萌芽能力により長期間個体を維持する種特性を示しており、低頻度撹乱に依存した個体群維持機構と合致する。 3.上記の知見を基に、GIS上での地形因子解析を通してヤクシマサルスベリの潜在的な生育可能域の推定を行った。その結果、任意の地点の地形因子に集水域および流路の属性を付加することで、高い精度の生育地推定が可能であった。
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