2000 Fiscal Year Annual Research Report
材質の健全性に関与する遺伝因子と環境因子の分子生物学的・樹木病理学的解明
Project/Area Number |
12460078
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒田 宏之 京都大学, 木質科学研究所, 助手 (00115841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 慶子 森林総合研究所, 関西支所, 室長
原 正和 静岡大学, 農学部, 助手 (10293614)
久保井 徹 静岡大学, 農学部, 教授 (20132847)
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Keywords | ピノシルビン合成酵素遺伝子 / アカマツ / 水ストレス / 低温誘導 / デハイドリン / ウンシュウミカン |
Research Abstract |
材質に関与すると考えられる遺伝的因子として、水関連因子および二次代謝関連因子に焦点をあてた。初年度は、特に、遺伝因子の単離・機能解明と樹木枯損の原因究明に力を注いだ。 1)ストレス誘導性二次代謝関連遺伝子、ピノシルビン合成酵素遺伝子3種類をアカマツから単離し、大腸菌で発現させて酵素活性を解析した。その結果、3種類の遺伝子は98%前後のホモロジーをもつ近縁種であるが、酵素活性が大きく異なり、アカマツ中での機能分担が予測される。 2)いくつかの材質指標となる遺伝子を決定するために、DNAアレーヤーを試作するとともに、アカマツのcDNAクローンをランダムに約2000個単離して塩基配列解析を進めている。 3)木本植物が水ストレスや低温ストレスに順応する仕組みを知るため、水ストレス誘導性遺伝子デハイドリンをウンシュウミカンから単離し、その機能を明らかにした。ウンシュウミカンのデハイドリンは低温でのみ誘導され、凍結失活しやすい酵素(カタラーゼや乳酸脱水素酵素)を保護したので、低温ストレスによる植物細胞の機能失活を緩和していると思われた。 4)北海道釧路地域で70年生トドマツ人工林に集団枯損が発生した。その原因は、昆虫や微生物などの生物被害ではなく、気象害であると判断された。被害発生年の3月頃、樹幹内の木部樹液が凍結している時期に特異的な気温上昇および葉面温度上昇があり、蒸散が活発になった可能性が高い。その結果樹液上昇が阻害され、梢端部から下方向に組織内の水分が失われた。通導阻害がある期間継続すると、その後に水分供給があっても樹液流の回復は困難であり枯損につながることが明らかになった。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Kodan,A.,Kuroda,H., Sakai,F.: "Simultaneous expression of stilbene synthase genens in Japanese red pine (Pinus densiflora) seedlings"J.Wood Sci.. 47(1). 58-62 (2001)
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[Publications] Etoh,K.,A.Kodan,F.Sakai and H.Kuroda: "An O-methyltransferase (OMT) cDNA clone in Japanese red pine (Pinus densiflora) seedlings"Wood Research. 87. 8 (2000)
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[Publications] Kim,Y.J.,H.Kuroda,and F.Sakai: "Isolation of genomic DNA from Japanese red pine (Pinus densiflora)"Wood Research. 87. 9-10 (2000)
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[Publications] Kodan,A.,Kuroda,H.and Sakai,F:: "Stilbene synthase from Japanese red pine, its role in stilbenoid biosynthesis"Proceedings of the 3^<rd> international wood Science Symposium. 258-263 (2000)
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[Publications] 黒田慶子: "ヒノキ漏脂病の罹病樹齢および樹脂流出促進要因の解剖学的検討"木材学会誌. 46. 503-509 (2000)
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[Publications] 黒田慶子: "道東トドマツ壮齢人工林に発生した集団枯損-水分通導阻害がなぜ起こったのか-"森林保護. 276. 12-14 (2000)
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[Publications] Kuroda,H.and Kuroda K: ""Tree Sap II", ed.Teraszawa, Minoru, Hokkaido Univ.Press"Candidate genes involved in water pump of trees. 67-75 (2000)
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[Publications] 黒田慶子: "北方林業 52"第2回国際樹液サミット美深2000-北方圏8カ国による最先端シンポジウム-. 205-209 (2000)