Research Abstract |
本研究では,家畜糞尿堆肥化の先進事例である岡山県内の津山市,哲多町,美星町,川上村,および県外では北海道,岩手県,三重県,熊本県を対象に実態調査を行った。また,堆肥化の技術的なデータを収集するために,岡山県畜産総合センターでの堆肥共励会に参画した。特に,川上村では,広域合併JAの営農面活動や,有限会社組織によるワインの生産販売について,資源循環型地域活性化システムの視点から実態調査を行った。そして,熊本県阿蘇郡小国町では,町役場による企画調整機能の発揮に基づく,農林一体型地域活性化の取り組みの実態調査を行った。以上の調査結果から,今年度は、下記の四項目について研究を進めた。 1 家畜糞尿堆肥化を促進するための政策内容に関する研究を行い,(1)糞尿処理サービス需要曲線の定式化モデル,ならびに(2)糞尿堆肥化による社会的便益曲線の定式化モデルを完成した。当該モデルを基に,糞尿処理料金システムの相違により,糞尿処理による社会的経済余剰変化の計測に着手した。 2 地域住民を中心とした人材という地域資源の活用と,その自己実現のための環境創出にむけた,協同組合セクターや自治体の役割について研究を進めた。 3 堆肥化を行う畜産部門のコスト計算,堆肥を用いる耕種部門の農産物マーケティングを通じた高付加価値化の実態を明らかにし,畜産・耕種両部門における持続的経営展開のための条件を導出しようとした。 4 岡山県における共同堆肥化施設の利用率を規定する諸要因を明らかにし,その影響力をパス解析法により,定量的に評価した。大規模農家ほど,共同処理の経営的メリットが大きいために利用率が高いこと,地域内の堆肥需要も利用率を押し上げる効果があり,地域農業の有機化への取り組みが必要であることを明らかにした。
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