2000 Fiscal Year Annual Research Report
膵ラ島スライス標本を用いたα細胞とβ細胞の機能協関システムの解明
Project/Area Number |
12470005
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
泉井 亮 弘前大学, 医学部, 教授 (80108505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武尾 照子 弘前大学, 医学部, 助手 (20113813)
菅 世智子 弘前大学, 医学部, 講師 (80003408)
菅野 隆浩 弘前大学, 医学部, 助教授 (90195181)
小川 吉司 弘前大学, 医学部, 助手 (30281926)
中野 京子 弘前大学, 医学部, 助教授 (10113820)
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Keywords | インスリン / グルカゴン / 膵ラ島 / 細胞内情報伝達 / ATP-感受性Kチャネル / 血糖調節 |
Research Abstract |
今年度は本研究に必要とする機器の準備と本研究課題に関連する研究を行った。研究はインスリン分泌の細胞機構において自律神経機能、特に副交感神経系の役割を明らかにすることである。このため、膵ラ島からのインスリン分泌、単離膵β細胞の電気的特性に対するアセチルコリン(ACh、副交感神経末端より放出される)の作用について検討した。インスリン分泌量はラット膵臓より分離したラ島を20個ずつシリンジフィルターに入れて、1ml/minの流速で灌流し、流出液のインスリン濃度をELISA法で測定した。単離膵β細胞の電気的特性の解析にはパッチクランプ法を用いた。なお、細胞外液のグルコース濃度は5.5mMとした。 実験の結果、以下のことが明らかになった。 1.Ach(1μM)はラ島からのインスリン分泌を促進する。この効果はプロテインキナーゼC(PKC)阻害薬のBIMによって一部抑制される。一方、L-type Ca^<2+> channel阻害薬のニフェジピンはAChのインスリン分泌促進効果をほぼ完全に抑制する。 2.ACh(0.1〜10μM)は膵β細胞を脱分極させ、Ca^<2+>性の活動電位を発生させる。脱分極の大きさには濃度依存性がある。BIMはこのAChの膜電位に対する作用に影響しない。 3.AChはATP-sensitive K^+ channel(K_<ATP>)を流れる膜電流を抑制し、これが脱分極発生の要因になっている。AChによるK_<ATP>の抑制は細胞内にヘパリン(IP_3の阻害薬)を投与するか、細胞内のCa^<2+>を強くキレートすると消失する。 4.ATPによるK_<ATP>抑制の感受性は細胞膜内側のCa^<2+>濃度を上昇させると増大する。 これらの結果から、ACh応答ではIP_3によって細胞内から放出したCa^<2+>がK_<ATP>の活性を抑制することで、Ca^<2+>流入の引き金となる脱分極を生ずることが判明し、膵β細胞のインスリン分泌調節においてはCa^<2+>によるCa^<2+>流入の促進という正のフィードバック機構の存在することが明らかになった(論文投稿中)。
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