2001 Fiscal Year Annual Research Report
精神分裂病の分子シグナル異常とその病態プロファイリング
Project/Area Number |
12470035
|
Research Institution | NIIGATA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
那波 宏之 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50183083)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
染矢 俊幸 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (50187902)
池田 研二 東京医学研究機構, 東京都精神医学総合研究科, 参事研究員 (90232181)
|
Keywords | 精神疾患 / 精神分裂病 / サイトカイン / インターロイキン-1 / 遺伝子プロファイリング / ストレス |
Research Abstract |
精神分裂病は、思春期に発病する慢性の難病で、社会的にも大きな問題を抱えている疾患である。しかし、この病気の診断はDSM4といった心理症候を基準にしているため、科学的根拠や客観性には未だ大きな問題がある。我々のDNAアレイを用いた遺伝子プロファイリング研究では、これまで精神分裂病脳の前頭前野において、成長因子とその受容体遺伝子群のRNA発現変化が最も顕著であった。同様に線条体においては、サイトカインとその受容体に関連する遺伝子群の変化が際立っていた。そこで本研究では、ストレス感受性と関連するといわれるサイトカイン、インターロイキン1ベータ(IL1B)とインターロイキン受容体アンタゴニスト(IL1RA)に着目し、精神分裂病における脳組織中(前頭前野、視床下部、皮質運動野)の動態変化を解析した。血清でもIL1BとIL1RAの蛋白レベルを酵素免疫測定法により定量し、病態マーカーとなる可能性も検討した。本研究は新潟大学倫理委員会の承認に基づき実施した。分析した剖検脳の各脳部位中、ヒト前頭前野において、分裂病患者群では有意なIL1RA蛋白レベルの低下を観察した。どの脳部位でもIL1B蛋白レベルの変動は見られなかった。ウエスタン解析によると、そのIL1受容体発現レベルには変化が無かった。一方、分裂病患者と健康ボランティアの血清中IL1BとIL1RAレベルも測定し比較したところ、脳内とは逆に、分裂病群で上昇傾向にあった。向精神薬の影響を評価する目的で、haloperidolの3週間の慢性投与をラットで行った。向精神薬投与ラットとコントロールラットの脳内IL1BとIL1RAには、変化が見られなかったことから、ヒト患者脳において観察されたこれらのサイトカインのレベル変動は、治療薬の効果ではなく精神分裂病の本態を反映しているものと考えられた。従って精神分裂病においてはインターロイキン1を介したストレスシグナル異常がその病態に関与する可能性が示唆された。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] Takashi Futamura 他9名: "Abnormal expression of epidermal growth factor and its receptor in the forebrain and serum of schizophrenic patients"Molecular Psychiatry. (in Press). (2002)
-
[Publications] Akiya Watakabe 他6名: "Similarity and variation in gene expression among human cerebral cortical subregions reveled by DNA macroarrays : Techinical consideration of RNA expression profiling from postmortem samples"Mol. Brain Res. 88. 74-82 (2001)
-
[Publications] 那波宏之: "死後脳を用いた精神分裂病の病態関連遺伝子の探索と創薬の可能性"分子精神医学. 1巻1号. 12-18 (2001)
-
[Publications] 渡部 雄一郎: "神経栄養因子・サイトカインと精神疾患"現代医療. 33巻. 2697-2702 (2001)