2001 Fiscal Year Annual Research Report
発育期ウイルス性脳障害における神経病原性の発生機序に関する研究
Project/Area Number |
12470054
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
筒井 祥博 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50073135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小杉 伊三夫 浜松医科大学, 医学部, 助手 (10252173)
馬場 聡 浜松医科大学, 医学部, 助教授 (10242760)
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Keywords | ウイルス性脳障害 / サイトメガロウイルス / トランスジェニックマウス / 大脳スライス培養 / 発育期脳障害 |
Research Abstract |
1.ウイルス遺伝子発現トランスジェニック(Tg)マウスによる神経系細胞特異性、神経病原性の解析:私達は既にマウスサイトメガロウイルス(MCMV)感染細胞に対するモノクローナル抗体(mAb)D5を作成し、感染細胞の早期核抗原特異的に染色され、持続感染状態では神経細胞特異的に反応することを示した。この早期抗原をコードするM112-113遺伝子のプロモーター領域にレポーター遺伝子LacZを接続した組換体を導入したTgマウスを作成した。数系統のTgマウスがlacZを発現し、β-galactosidaseの発現をX-Gal染色で見たところ、これらのTgマウスは中枢神経系のみで発現し、抗β-Gal抗体による免疫染色では神経細胞のみで発現することが明らかとなった。弱く発現する系統にMCMVを脳内感染したところ、このトランスジーンの発現が増強された。また、発育段階でこのトランスジーンの発現は神経細胞の分化成熟に伴ってその発現が増強し、発現する神経細胞の範囲が拡大した。以上の結果は、CMVの胎内感染によって生後脳障害が起きやすい理由を説明出来る分子的根拠を示すものとして重要であると考える。 2.発育期マウス脳におけるMCMV感染に対する非特異免疫反応の解析:出生直後のマウス脳内にMCMVを注入し、経時的に脳を取り出して解析すると、始めは脳室壁のマクロファージやグリア系未分化細胞に感染し、NK細胞やマクロファージのNO合成酵素が反応するが、感染が進行すると海馬や大脳皮質の神経細胞にMCMV早期遺伝子の発現が認められるようになる。これらの感染神経細胞はNK細胞やNO合成酵素の反応が弱く、非特異免疫反応が起りにくいことが明らかになった。このことが神経細胞が持続感染へと移行する要因になると考える。 3.大脳スライス培養を用いたMCMV感染動態の解析:大脳スライス培養にMCMVを感染させると、発育段階の進行とともに感受性が低下し、最も感受性のある細胞は脳室壁の未分化神経系細胞と大脳軟膜下の未分化神経系細胞で、特にグリア系細胞であることが明らかとなった。これらの急性期の感受性細胞から、如何に神経細胞にその感染が移行し、持続するかが今後の問題である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Kosugi, I.: "Cytomegalovirus infection of the CNS stem cells from mouse embryo : A model for developmental brain disorders induced by cytomegalovirus"Laboratory Investigation. 80(9). 1373-1383 (2000)
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[Publications] Li, R-Y.: "Growth retardation and microcephaly induced in mice by placental infection with murine cytomegalovirus"Teratology. 62. 79-85 (2000)
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[Publications] Li, R-Y.: "Activation of murine cytomegalovirus immediate-early promoter in cerebral ventricular zone and glial progenitor cells in transgenic mice"GLIA. 35. 41-52 (2001)