2002 Fiscal Year Annual Research Report
トリパノソーマ科原虫ピリミジン合成経路の6酵素の全遺伝子と発現タンパク質の解析
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12470061
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
青木 孝 順天堂大学, 医学部, 教授 (20053283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奈良 武司 順天堂大学, 医学部, 講師 (40276473)
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Keywords | ピリミジンヌクレオチド生合成経路 / pyr遺伝子クラスター / トリパノソーマ / 遺伝子過剰発現 / 遺伝子ノックアウト / 海藻抽出液 / 組換え酵素活性 |
Research Abstract |
Typanosoma cruziのピリミジン合成遺伝子は、5'側からpyr1、pyr3、pyr6/5(融合遺伝子)、pyr2、pyr4の順に染色体DNA上に配列してpyr遺伝子クラスターを構成している。本クラスターは我々が生物界で始めて発見したものであり、平成12〜13年度は主に、他種生物と異なるこれら全遺伝子の独特な特徴および第1〜3酵素のタンパク質間相互作用について解析し、重要な知見を得た。平成14年度は、第1酵素CPSIIの過剰発現原虫株、第4酵素DHODの相同組換えによるノックアウト原虫株および、組換えDHODアッセイ系を応用した酵素活性阻害物質の探索をおこなった。本原虫DHOD遺伝子は3コピー存在する(Tulahuen株)ので、これらをhygromycin, tunicamycin, phleomycin耐性遺伝子で順次置き換えDHOD遺伝子の破壊を試みたところ、第2回のノックアウトによって原虫は生育できなくなった(致死的)ことから、本酵素は生存に必須であることが分かった。そこで、最近、抗菌作用や抗腫瘍活性を示す生理活性物質を含むことから注目されている海草類の抽出物をDHODアッセイ系に添加し、DHODの阻害物質を検索した。81種類の海草の内、ヒバマタ、エゾイシゲのメタノール抽出液に強い阻害作用が検出された。両褐藻の抽出液1/50量の添加によりDHOD活性は80%以上阻害された。さらに、トリパノソーマ用シャトルベクターpTEXにT.cruziのCPSII遺伝子を組込み、本原虫に導入して増殖速度や感染マウスでの原虫密度(parasitemia)、マウスの死亡率などを調べたところ、高いparasitemiaや死亡率の上昇が認められた。CPSIIはピリミジン塩基生合成経路の律速酵素であることを考慮すると、本酵素の過剰発現原虫株はマウス体内でより速く増殖すること、すなわち病原性上昇の可能性が考えられた。T.cruziの第5、第6酵素(OPRT, OMPDC)については詳細な解析に至らなかったが、ゲノムプロジェクトが終了したマラリア原虫との比較検討など、きわめて重要で興味深い課題が残されており、その線に沿った研究が進行中である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Nara T, Zou C, Mikami Y, Aoki T: "Two-hybrid analysis of the de novo pyrimidine biosynthetic enzymes from Trypanosoma cruzi"Proceedings of the 10th International Congress of Parasitology, Monduzzi Editore, Italy. 269-272 (2002)
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[Publications] Takashima E, Inaoka DK, Osanai A, Nara T, Odaka M, Aoki T, Inaka K, Harada S, Kita K: "Characterization of the dihydroorotate dehydrogenase as a soluble fumarate reductase in Trypanosoma cruzi"Molecular and Biochemical Parasitology. 122. 189-200 (2002)
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[Publications] Nara T, Hashimoto T, Aoki T: "Evolution of de novo pyrimidine biosynthetic pathway in parasitic protists"Tenth International Congress of Parasitology 抄録集. (2002)
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[Publications] Nara T, Zou C, Aoki T: "Protein interaction of the first three enzymes of de novo pyrimidine biosynthetic pathway in Trypanosoma cruzi"Tenth International Congress of Parasitology 抄録集. (2002)
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[Publications] 案浦健, 奈良武司, 牧内貴志, 青木孝: "トリパノソーマ科原虫におけるピリミジン合成経路第4酵素dihydroorotate dehydrogenaseの起原"第25回日本分子生物学会抄録集. 464 (2002)
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[Publications] 奈良武司, 三上由祐子, 青木孝: "Trypanosoma cruziのカルバモイルリン酸合成酵素II(CPS II)遺伝子導入株の解析"第72回日本寄生虫学会大会抄録集. 84 (2003)
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[Publications] 牧内貴志, 奈良武司, 案浦健, 大島泰郎, 青木孝: "植物鞭毛虫euglenaおよびトリパノソーマ科原虫におけるジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHOD)の分子進化学的解析"第72回日本寄生虫学会大会抄録集. 84 (2003)
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[Publications] 案浦健, 奈良武司, 牧内貴志, 青木孝: "キネトプラスト目原虫におけるピリミジン合成経路第4酵素dihydroorotate dehydrogenaseの分子進化学的解析"第72回日本寄生虫学会大会抄録集. 84 (2003)