2000 Fiscal Year Annual Research Report
幼若Tリンパ球の分化方向と位置移動を決定づける分子シグナル
Project/Area Number |
12470077
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
高濱 洋介 徳島大学, ゲノム機能研究センター, 教授 (20183858)
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Keywords | Tリンパ球 / 細胞分化 / 胸腺 / 遺伝子治療 / アポトーシス / MAPキナーゼ / 正と負の選択 / 免疫療法 |
Research Abstract |
幼若Tリンパ球の正負選択における細胞生死の分岐決定シグナルを解析した。昨年度までにすでに、正の選択による細胞分化誘導にはMKK1→ERKキナーゼ経路、負の選択による細胞死誘導にはMKK6→p38キナーゼ経路と、異なるMAPキナーゼ経路の活性化がそれぞれ優先的に関与することを明らかにしてきたので、本研究では、正と負の選択を起こすZAP-70信号がどのようにMKK1とMKK6の優先的活性化をもたらすのか解析した。その結果、MAPKKKのひとつASK1が負の選択における抗原レセプターシグナルの伝達に部分的に関与する一方、正の選択における抗原レセプターシグナルには関与しないことが明らかになった。幼若Tリンパ球の生死運命決定が、部分的にはRaf-1とASK1といったMAPKKKの優先的活性化によって分別されることが示され、Tリンパ球による自己・非自己識別の分子基盤のよりよき理解がもたらされた。 また、Tリンパ球前駆細胞が多様な機能亜集団へと分岐する一方で他の細胞種を産生しない分化系譜決定機構を、ゲノムレベルで解析した。既に、外来遺伝子の挿入によってT・Bリンパ球への分化系譜決定に異常をきたしたミュータントマウスを発見し、Tリンパ球への分化系譜決定の分子機構に踏み込む格好の材料を得た。現時点までに、挿入部位ゲノムの染色体位置や配列の一部を明らかにし、近隣遺伝子の特定を進めている。 更に、Tリンパ球分化に伴う細胞の位置認知と移動を解析するため、前駆細胞の胸腺への移入や胸腺内での移動を経時的に直接顕微鏡下で動画としてトレースするための新規器官培養法の開発を進めた。
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[Publications] Kaneta,M., et al.: "A role for Pref-1 and HES-1 in thymocyte development"J.Immunol.. 164. 256-264 (2000)
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[Publications] Hayashi,K., et al.: "The AML1 transcription factor regulates the maturation of single positive T lymphocytes, an essential step to maintain the peripheral T cell pool."J.Immunol.. 165. 6816-6824 (2000)
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[Publications] Sheard,M.A., et al.: "Synchronous deletion of Mtv-superantigen-reactive thymocytes in the CD3^<medium/high>CD4+CD8+subset."Scand.J.Immunol.. 52. 550-554 (2000)
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[Publications] 上野智雄 ら: "T細胞の分化と機能発現に関わる分子:T細胞レセプター"臨床免疫. 34. 1-6 (2000)
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[Publications] 菅原剛彦 ら: "FTOCによるT細胞の分化と選択の解析"組織培養工学. 26. 76-80 (2000)
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[Publications] 高浜洋介: "幼若Tリンパ球の生と死を決定づけるシグナル伝達"蛋白質核酸酵素. 45. 1801-1811 (2000)
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[Publications] Spain,L.M., et al.: "Developmental Biology Protocols Vol.2."HUMANA PRESS. 530 (2000)
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[Publications] 高浜洋介: "Bio Science 用語ライブラリー免疫<第2版>"羊土社. 258 (2000)