2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12470086
|
Research Institution | 佐賀医科大学 |
Principal Investigator |
友国 勝麿 佐賀医科大学, 医学部, 教授 (40032891)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 久松 佐賀医科大学, 医学部, 助手 (40325600)
市場 正良 佐賀医科大学, 医学部, 助手 (60184628)
|
Keywords | 発がんリスク / 多環芳香族炭化水素 / DNA付加体 / コークス炉作業者 / 分子疫学研究 |
Research Abstract |
最近の我が国における死因統計によれば,死因の第1位を占める悪性新生物の内で,肺がんを中心とした呼吸器系のがんによる死亡が増加の一途をたどっており,特に男性では部位別死亡のトップになっている.この主たる原因は,タバコ煙やディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる発がん物質,とりわけ多環芳香族炭化水素類(PAH)への長期にわたる過剰暴露ではないかと言われているが,その定量的リスク評価は必ずしも十分でない.そこで我々は,PAHへの暴露により体内で生じるその代謝中間体とDNA塩基との共有結合体,即ちDNA付加体(adducts)に注目し,この付加体の体内での生成・修復のメカニズム並びにその体内レベルを知ることが,ヒトの感受性を考慮した環境発がんのリスク評価に有用ではないかと考え本研究を開始した.まず最初に,PAHへの暴露が高いと考えられる鉄鋼関連企業のコークス炉作業者集団より,インフォームドコンセントを得た上で少量の末梢血を採取し,出来るだけ速やかにリンパ球DNAを抽出した後,,-80℃のフリーザーに保存した.このサンプルを適宜解凍し,32Pポストラベリング法によりDNA付加体量を測定し比較検討した.その結果,コークス炉作業者のリンパ球DNA付加体レベルは対照群のそれよりも有意に高値を示した.また,同じコークス炉作業者の内でも特にPAHへの暴露濃度が高い者ほどリンパ球DNA付加体レベルが高い傾向が示された.リンパ球DNA付加体レベルの高い者ほど発がんのリスクが有意に高いと言う作業仮説を解明するためには,今後長期間にわたる追跡調査が必要であり,現時点では何とも言えない.一方,がんによる死亡の家族歴を有する作業者集団では,そのような家族歴のない作業者集団に比べてリンパ球DNA付加体レベルが有意に高い傾向が示唆された.詳細は今後の研究に待ちたい.
|
-
[Publications] J.Zhang: "Aromatic DNA adducts in coke-oven workers, in relation to exposure, lifestyle and genetic……"International Archives of Occupational and Environmental Health. 73. 127-135 (2000)
-
[Publications] J.Zhang: "The relationship between aryl hydrocarbon hydroxylase activity and DNA adducts measured by……"Biomarkers. 5(2). 152-157 (2000)
-
[Publications] M.Ichiba: "Inter-individual variation of smoking-related DNA adducts in lymphocytes-relationship to mRNA levels…"Biomarkers. 5(3). 235-239 (2000)