2002 Fiscal Year Annual Research Report
アスベスト及びその代替繊維の肺に対する酸化的ストレス毒性の研究
Project/Area Number |
12470103
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Research Institution | Hyogo College of Medicine |
Principal Investigator |
井口 弘 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (90025643)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西池 珠子 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (40309448)
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Keywords | じん肺 / 炎症性サイトカイン / アスベスト / ニトロソチオール / 一酸化窒素 / 活性酸素 / パーオキシナイトライト / 酸化ストレス |
Research Abstract |
じん肺、特にアスベストおよびアスベスト代替繊維の呼吸器毒性については多くの未解明な部分が残されている。肺の第一防御線としてこれら繊維を貪食する肺胞マクロファージ(AM)が重要な機能を果たすと考えられる。この機能にはAMによる一酸化窒素合成酵素誘導(iNOS)と多量の一酸化窒素(NO)、O_2^-などのラジカル産生、これらによるONOO^-形成、NOやONOO^-による細胞内還元物質であるグルタチオンとのGS-NO形成による酸化ストレスの増強や蛋白の遊離チオール基とのRS-NOの形成等、更にはAMによる炎症性サイトカインノ産生による慢性炎症の発生が肺線維症、ひいては肺悪性腫瘍の発生に深く関与していると考えられる。 そこで我々は上記の繊維をマクロファージ系のライン化細胞RAW264.7、J774細胞を培養して、NO、O_2^-GS-NOやRS-NOの産生を調べ、それらの増加をあきらかにした。同様の結果はWistar系ラットの気管内にアスベストを注入した24および48h後の肺胞気管支洗浄液や肺胞マクロファージの培養からも明らかにした。つぎに、繊維と培養した肺胞マクロファージ、マクロファージ系ライン化細胞のいずれにおいても炎症性サイトカインの産生増加を照明した。 GS-NOやRS-NOの測定は我々が独自に開発したNOと特異的に反応する蛍光試薬を用いた新しい簡便な方法で測定した。その結果、NOの産生増加によってGS-NOやRS-NO形成増加が起こることを示した。同時に、グルタチオンの著明な減少とO_2の有意な増加をも明らかにした。 以上から、AMはアスベストやその代替繊維を貪食して炎症性サイトカインの産生増加と酸化ストレスの増強を惹起し、慢性炎症による肺線維症に導き、さらには肺悪性腫瘍の発生をもたらす強い可能性を実験的事実から示すことに成功した。
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