2001 Fiscal Year Annual Research Report
虚血及び各種中毒における新規過酸化脂肪酸の病態生理機能と診断法開発に関する研究
Project/Area Number |
12470107
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 謙一 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40166947)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 雅彦 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (70302669)
岩瀬 博太郎 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (30272420)
|
Keywords | 心筋梗塞 / 虚血 / 活性酵素 / 脂質過酸化 / 一酸化炭素中毒 / 細胞死 / 一酸化窒素 / 細胞内情報伝達系 |
Research Abstract |
1.脳一酸化炭素(CO)中毒における過酸化脂質生成と障害に関する研究 遷延性CO中毒死症例の脳の基底核・皮質・海馬などにおいてアポトーシス・ネクローシスによる細胞死が混在していた。病変の分布は虚血では説明できなかった。基底核では、DNA断片化を確認した。 ラットCO暴露後回復モデルを作成し、脳の特に皮質下壊死を認めた。壊死巣に一致して、細胞核に過酸化脂質の指標である4-hydroxynonenal(HNE)が生成し、低体温により皮質下壊死とHNEの発生は抑制された。また、過酸化脂質の指標である7-hydroxysterol測定系を確立し、CO吸入後回復ラット脳で増加していること、低体温が、この増加を抑制することを見出した。以上の結果よりCO中毒の病変生成に脂質過酸化が寄与していること、低体温によりこれが抑制され、治療効果が予測されることが示された。 2.心筋梗塞における過酸化脂質生成と障害に関する研究 ラット心筋梗塞モデルでHNEとTNF-αが著増し(1時間でピーク)、この増加を梗塞前狭心症を再現する短時間虚血再灌流反復によるischemic preconditioning(IP)が梗塞によるHNE増加を増強し、TNF-α増加を抑制することを見出した。組織学的・生化学的分析でHNEは血管内皮と心筋細胞膜に局在した。TNF-α増加に転写因子(NF κB)が関与することが示唆された。 3.心筋梗塞における血管内皮由来成長因子(VEGF)を介した血管新生と一酸化窒素産生酵素(NOS)誘導ラット,心筋梗塞モデルにおいて、IP後の梗塞はPKC-εを介してVEGF遺伝子を誘導し、血管新生を促すことを見出した。一方、恒常発現型内皮eNOS遺伝子・蛋白の発現がIP後の梗塞で増加し、側副血行路の拡張を促すことを見出した。 4.心筋梗塞におけるコネクシン43(Cx43)の分解とIPによる抑制 早期梗塞心筋(1h)でCx43がリソソーム・プロテアソームにより分解・脱リン酸化すること、IPがPKC依存性に分解を抑制することを見出した。Cx43は細胞間伝達と収縮協調に寄与するので、分解は不整脈に繋がると思われ、突然死における不整脈関与の証拠と考えることもできる。 5.ラット心筋由来(H9c2)細胞の虚血細胞死と活性酸素種(ROS)生成をCOが抑制する H9c2細胞は虚血によりROSを生成し、ネクローシスにより死ぬ。COが虚血細胞死とROS生成(DCF蛍光)と脂質過酸化(HNE生成)を抑制する。細胞死抑制作用は、MAP kinase/ERK活性化酵素阻害剤で抑えられることより、この経路を介した抗細胞死蛋白誘導か活性化によると思われる。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Kawata H, Yoshida K, Kawamoto A, Kuroiwa H, et al.: "Ischemic preconditioning upregulates VEGF mRNA expression and neovascularization via PKCεin ischemic myocardium"Circ Res. 88. 696-704 (2001)
-
[Publications] Kudo R, Adachi J, Uemura K, Maekawa T, Ueno Y, Yoshida K.: "Lipid peroxidation in the rat brain after CO inhalation is temperature dependent"Free Radical Biol Med. 31. 1417-1423 (2001)
-
[Publications] Uemura K, Harada K, Sadamitsu D, Tsuruta R, et al., Yoshida K: "Apoptotic and necrotic brain lesions in a fatal case of carbon monoxide poisoning"Forensic Sci Int. 116. 213-219 (2001)
-
[Publications] Shiraishi K, Naito K, Yoshida K.: "Inhibition of calpain but not caspase protects the testis against injury after experimental testicular torsion of rat"Biol.Reproduct. 63. 1538-1548 (2000)
-
[Publications] Sakurada K, Iwase H, Kobayashi M, et al.: "cis-9, 10-methylenehexadecanoic acid inhibits contractility and actomyosin ATPase activity of guinea pig myocardium"Biochem Biophys Res Commun.. 274. 533-536 (2000)
-
[Publications] Mizukami Y, Kobayashi S, Kobayashi, N et al., Yoshida K: "Nuclear mitogen-activated protein kinase activation by protein kinase C zeta during reoxygenation after ischemic hypoxia"J.Biol.Chem.. 275. 19921-19927 (2000)
-
[Publications] 吉田 謙一: "事例に学ぶ法医学"有斐閣. 283 (2001)