2002 Fiscal Year Annual Research Report
消化器病変の発生・進展における腸内細菌毒素認識機構の解明
Project/Area Number |
12470129
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Research Institution | Juntendo University School of Medicine |
Principal Investigator |
佐藤 信紘 順天堂大学, 医学部, 教授 (90028358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺井 毅 順天堂大学, 医学部, 講師 (90245704)
竹井 謙之 順天堂大学, 医学部, 講師 (10306954)
荻原 達雄 順天堂大学, 医学部, 助教授 (80011196)
池嶋 健一 順天堂大学, 医学部, 講師 (20317382)
広瀬 美代子 順天堂大学, 医学部, 助手 (70266039)
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Keywords | 腸内細菌 / エンドトキシン / アルコール性肝障害 / Kupffer細胞 / CD14 / Toll-like receptor / TNF-α / 炎症性腸疾患 |
Research Abstract |
本研究では主としてアルコール性肝障害および炎症性腸疾患を対象に、腸内細菌由来毒素認識機構の病態形成への関与を明らかにすることおよびそれに基づく治療戦略の確立を目指している。 平成14年度には、この観点からのアルコール性肝障害に対する治療法の確立を目的として、ラット慢性エタノール投与モデルでのサリドマイドの肝障害抑制効果とそのメカニズムに関する検討を論文発表した(Enomoto N, et al. Gastroenterology 123:291-300,2002)。サリドマイドはマクロファージのTNF-α産生を特異的に抑制する作用を有することが知られているが、今回の検討ではそれに加えて慢性エタノール投与によるKupffer細胞のCD14発現のアップレギュレーションがサリドマイドで抑制されることが明らかになり、本薬剤によりアルコール性肝障害の進展過程におけるエンドトキシン感受性増大を制御可能であることが実験的に証明された。 また、炎症性腸疾患に対するアプローチとしては前年度に引き続きTNBSおよびDDS誘発大腸炎モデルを用いた解析を進めている。私たちはクローン病モデルとされるTNBS腸炎がアミノ酸の一種であるグリシンの経口前処置により著明に抑制されることを見出し、この際にIL-1やTNF-αなどの炎症性サイトカインの発現抑制と共にCINC、MIP-2などの好中球走化性に関与するケモカインの発現誘導が著明に抑制されることを明らかにした。このグリシンの腸炎抑制効果は急性期のみならずTNBS投与後14日までの長期観察でも明らかであり、また、TNBS腸炎を誘発後にグリシンの経口投与を開始しても潰瘍性病変の改善効果が得られることが確認された。さらに潰瘍性大腸炎モデルであるDSS腸炎に対してもグリシン前処置による抑制効果が観察された。私たちはこれまでグリシンがエンドトキシンなどによるマクロファージおよび好中球の活性化抑制作用を有することを報告してきており、今回の一連の検討からグリシンを用いた免疫栄養的アプローチが細菌由来毒素による腸管の自然免疫賦活に伴う炎症性腸疾患の発症、増悪に対して有用である可能性が示唆され、さらに臨床応用への道が拓けたと考えられる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Enomoto N, Takei Y, Hirose M, Ikejima K, Miwa H, Kitamura T, Sato N: "Thalidomide prevents alcoholic liver injury in rats through suppression of Kupffer cell sensitization and TNF-α production"Gastroenterology. 123. 291-300 (2002)
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[Publications] Nishiyama D, Ikejima K, Honda H, Hirose M, Takei Y, Sato N: "Acute ethanol administration down-regulates Toll-like receptor-4 in the murine liver"Hepatol.Res.. 23. 130-137 (2002)
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[Publications] Ikejima K, Takei Y, Honda H, Hirose M, Yoshikawa M, Zhang YJ, Lang T, Fukuda T, Kitamura T, Sato N: "Leptin receptor-mediated signaling regulates hepatic fibrogenesis and remodeling of extracellular matrix in the rat"Gastroenterology. 122. 1399-1410 (2002)
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[Publications] Kon K, Ikejima K, Hirose M, Yoshikawa M, Enomoto N, Kitamura T, Takei Y, Sato N: "Pioglitazone prevents early-phase hepatic fibrogenesis caused by carbon tetrachloride"Biochem.Biophys.Res.Commun.. 291. 55-61 (2002)
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[Publications] Honda H, Ikejima K, Hirose M, Yoshikawa M, Enomoto N, Kitamura T, Takei Y, Sato N: "Leptin is required for profibrogenic responses in the murine liver induced by thioacetamide"Hepatology. 36. 12-21 (2002)
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[Publications] Shibuya T, Takei Y, Hirose M, Ikejima K, Enomoto N, Maruyama A, Sato N: "A double-stranded decoy DNA oligomer for NF-κB inhibits TNFα-induced ICAM1 expression in sinusoidal endothelial cells"Biochem.Biophys.Res.Commun.. 298. 10-16 (2002)