2002 Fiscal Year Annual Research Report
概日リズム障害の遺伝子解析及び複数の遺伝子が関与する疾患の解析モデルの構築
Project/Area Number |
12470198
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Research Institution | Saitama Medical School |
Principal Investigator |
海老澤 尚 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (00201369)
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Keywords | 時計遺伝子 / カゼインキナーゼ / 概日リズム障害 / リン酸化 / 遺伝子多型 / メラトニン受容体 / G蛋白 |
Research Abstract |
概日リズム睡眠障害である睡眠相後退症候群(DSPS)、非24時間睡眠覚醒症候群を対象に時計遺伝子の多型解析を行った。概日リズム睡眠障害発症に関与する多型として既にPer3遺伝子のH4 haplotype、Clock遺伝子のT3111C多型を報告済だが、今年度はハムスターのリズム変異体tauの原因遺伝子であり、PER蛋白などの時計蛋白をリン酸化するCasein Kinase I epsilon(CK I ε)遺伝子の多型解析を行った。ミスセンス多型1個を含む計4個の多型を見いだした。ミスセンス多型は、多くのほ乳動物のCK I ε及びCKI δで保存されているアミノ酸の置換をもたらした。このミスセンス多型の頻度は、概日リズム障害群では正常群の約半分と低頻度であり、その発症を抑制すると考えられた。大阪大学蛋白質研究所の高野・礒島両氏の協力を得てこのミスセンス多型がCKI εの酵素活性に与える影響を調べたところ、活性が約1.8倍になることが明らかになり、これが概日リズム発症を押さえる要因と考えられた。この多型は正常被験者の約20%に存在し、その概日リズムの個体差にも影響しているのではないかと思われる。 また、以前見出したメラトニン1A受容体のR54W変異が受容体と各G蛋白との結合に及ぼす影響を、G蛋白のキメラ遺伝子を用いて調べた。G蛋白のキメラ遺伝子は慶応大学西本教授から提供を受けた。メラトニン受容体とG蛋白をCOS-1細胞に共発現させて調べたところ、R54W変異を持つ1A受容体は、持たないものに比べてGi1/2,Gi3との結合は強化され、Gq/11等との結合が減少しているのが見出された。このG蛋白との結合性の変化がヒトの概日リズムに影響を与える原因と思われた。 上記の研究により、ヒトの概日リズムに変化を与える時計遺伝子の多型に関する知識を深めた。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] Kohtoku Satoh, Kazuo Mishima, Yuichi Inoue, Takashi Ebisawa, Tetsuo Shimizu: "Two pedigrees of familial advanced sleep phase syndrome in Japan"Sleep. (印刷中). (2003)
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[Publications] 海老澤 尚: "概日リズムと睡眠障害-時計遺伝子からみた睡眠障害"医学のあゆみ. 204(11). 799-802 (2003)
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[Publications] 海老澤 尚: "体内時計機構の分子医学"Molecular Medicine. 40(3). 318-325 (2003)
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[Publications] 海老沢 尚: "時計遺伝子の発見と時間生物学"精神科. 1(5). 382-387 (2002)
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[Publications] 海老沢 尚: "時計遺伝子と睡眠覚醒障害"脳と精神の医学. 13(3). 289-295 (2002)
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[Publications] 海老澤尚: "概日リズム障害の遺伝子解析"内分泌・糖尿病科. 14(4). 408-413 (2002)
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[Publications] 海老澤 尚: "生体リズム障害の分子生物学的背景"Prog. Med.. 22. 1385-1389 (2002)
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[Publications] 海老澤 尚: "メラトニン受容体および時計遺伝子多型と概日リズム障害"現代医療. 34. 63-67 (2002)
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[Publications] 海老澤 尚(分担執筆): "「KEYWORD」樋口輝彦、神庭重信、染谷俊幸、宮岡等編集"先端医学社. 252 (2003)