2002 Fiscal Year Annual Research Report
アデノウイルスベクターを用いた末梢神経再生促進に関する研究
Project/Area Number |
12470301
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田尻 康人 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (30242051)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 耕三 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60126133)
田中 栄 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (50282661)
星地 亜都司 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70236066)
山本 真一 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (30282560)
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Keywords | 末梢神経損傷 / 軸索再生 / 遺伝子導入 / 細胞内シグナル / シュワン細胞 |
Research Abstract |
前年度の結果よりラット後根神経節初代培養系にアデノウィルスを感染させた場合、神経節細胞だけでなく周囲のシュワン細胞にウィルスがとりこまれ、動態が変化することが明らかとなった。したがって平成14年度はまず、末梢神経において神経軸索周囲にミエリン鞘を形成するシュワン細胞のアデノウィルスベクター導入による変化を検討した。生後2日齢のラット坐骨神経よりシュワン細胞を単離培養し、ウィルス感染後にその増殖・分化能を定量評価した。その結果、シュワン細胞においては活性型MEK遺伝子導入によるMEK-ERK系の活性化は、増殖能の著しい亢進と細胞の脱分化を引き起こすことが明らかとなった。同時にその他の細胞内シグナルをアデノウィルスにより活性化しその効果を検討したところ、成長因子受容体の下流でRas-MEK-ERK系と並列に活性化されるPI3K-AKT系を活性化すると、シュワン細胞に対する分化促進効果のあることがわかった。これらの結果よりin vivoにおいて神経軸索にはMEK-ERK系の活性化が必要となり、またシュワン細胞にはPI3K-AKT系が分化制御に重要であると考えられた。 次に我々は成体ラット坐骨神経の切断・縫合モデルヘのアデノウィルスベクターによる遺伝子導入を検討した。初めに坐骨神経の中央1cmを切除し、これをex vivoでウィルスを含む培養液に浸して感染させることを試みたが、表面のみの感染にとどまっていた。感染条件の検討の結果、坐骨神経近位を切断後いったん閉創し、2週間後に再び遠位を切除してウィルスを感染させると十分内部まで感染が確認された。これはある程度変性した神経組織の方が内部までウィルスが行き渡るためと考えた。この知見をもとに今後は坐骨神経の同種間移植実験を予定している。
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