2002 Fiscal Year Annual Research Report
肺循環系における血管透過性亢進に関する神経回路と受容体のクローニング
Project/Area Number |
12470318
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
島田 康弘 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (50028669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 直久 愛知医科大学, 医学部, 教授 (80109321)
木村 智政 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (50161568)
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Keywords | 神経原性肺水腫 / 肺血管透過性 / NO / 迷走神経 / フィブリン肺水腫 |
Research Abstract |
神経原性肺水腫発生機序に関する神経回路の解明を行うため、以下の実験を行った。 興奮性神経伝達物質L-glutamateは中枢神経系に広く存在し、弧束核など神経核においてbNOSと共存している。脳、脊髄の虚血、損傷や腫瘍など神経原性肺水腫の併発する中枢神経系疾患でL-glutamateは神経細胞外に放出され、結果として神経細胞が過興奮の状態を生じ、細胞内のカルシウム濃度の上昇などが起こり、損傷を受けた神経細胞を細胞死に導く。中枢神経系におけるL-glutamateはNMDA受容体を介し、NOの遊離を促進すると報告されてきた。本研究では、ラットの第四脳室内にL-glutamateを灌流することによって濃度依存性にNO遊離の増加を見出した。この結果に基づいてL-glutamateの脳室内投与は見事に神経原性肺水腫の発生を抑制した。L-NAME或いはMK-801(NMDA型受容体の拮抗薬)の前投与はこの抑制作用をブロックし、D-NAMEでは影響がみられなかったことから、中枢神経系におけるL-glutamateはNMDA受容体に結合し、NOの合成を促進し、神経原性肺水腫を抑制することが示唆された。中枢神経損傷の場合、L-glutamateは神経細胞死を引き起こす悪い働きを持つだけではなく、神経原性肺水腫を抑制しようというよい役割も果たしている。左側迷走神経切断は2週間後に延髄の迷走神経核におけるbNOSの発現を増加させ、神経原性肺水腫を抑制することが明白である。このbNOS増加は神経細胞の再生あるいは変性にどのような役割を果たしているか、長期間に亘って不明であった。細菌の実験結果によると、左側迷走神経切断2週間後に同側の弧側核にNMDA R1受容体(NMDA型受容体のサブタイブの一つ)が増加していた。この結果はJunfeng等の報告と一致した。今までの結果を纏めるとL-glutamate-NMDA R1-calcium-bNOSのシグナル伝達路は神経原性肺水腫の発生に重要な役割を果たしていると考えられる。これらのことから、このようなシグナル伝達路の解明は神経原性肺水腫の発生機序の究明に役立ち、新しい神経原性肺水腫の治療薬の開発にも繋がると考えられる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Feng Guo Gang: "Inhibition of fibrin-induced neurogenic pulmonary edema by previous unilateral left-vagotomy correlates with increased levels of brain nitric oxide synthase in the nucleus tractus solitarii of rats"Autonnimic Neuroscience : basic and clinical. 102. 1-7 (2002)
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[Publications] Kondo Hiroko: "Effect of L-glutamate in the medulla oblongata on development of neurogenic pulmonary edema in rats"European Journal of Pharmacology. (in press).
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[Publications] Nan YS: "Neuropeptide Y enhances permeability across a rat aortic endothelial cell monolayer"Journal of Physiology. (in press).