2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12470501
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井出 利憲 広島大学, 医学部, 教授 (60012746)
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Keywords | テロメア / 細胞分裂寿命 / テロメラーゼ / 染色体外テロメア配列 / 細胞不死化 |
Research Abstract |
DNAが複製する毎に、DNA末端は5'端から100塩基程度ずつ短縮し、これが細胞の分裂回数の限界を決めると考えられている。細胞が無限に分裂するためには、複製毎のテロメア短縮を補償する必要があり、実際、原生生物をふくめて無限分裂する細胞の大部分は、テロメアDNAを合成するテロメラーゼを発現している。ヒトでも、生殖巣や癌組織、培養系の株化(不死化)細胞には強いテロメラーゼ活性がある。しかし、ヒト不死化細胞の中には、テロメラーゼ活性陰性であるにもかかわらずテロメアが維持され無限増殖する例外的な株がある。このような細胞株には例外なく染色体外テロメアDNA配列の核内集合体(ECTR)が多量に存在することを初めて突き止め、これが自己複製しつつ染色体末端のテロメアの供給源になっているとの仮説をたてた。本研究では、1.癌組織にもテロメラーゼ活性陰性でECTRを持つものがあることを確認し、2.テロメラーゼ陽性の癌細胞にテロメラーゼ阻害剤を与え続けると、ECTRが出現して阻害剤耐性株となる場合がある事を確認した。これらは、テロメラーゼ阻害剤を制癌剤として利用する際に問題になる。さらに、3.ECTRは細胞内で繰返し配列同士のアニーリング(と思われる)によって、電気泳動的に巨大な複合体として挙動していることを確認し、4.分裂期の細胞を緩和な条件で破壊してECTRを遊離させ、遠心分画によって大部分のクロマチンと分離して、ECTRを上清に回収することが出来た。5.これをさらに密度勾配遠心等によって精製し、ECTRDNA画分に会合しているタンパク質を解析中である。次年度以降は、染色体末端のテロメア構造のモデルとしてECTR複合体を構成する蛋白質について解析するとともに、ECTRが染色体テロメアを維持する機構を解析する。
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[Publications] Takahashi,S., et al.: "Expression of telomerase component genes in hepatocellular carcinomas."Eur.J.Cancer.. 36. 496-502 (2000)
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[Publications] Takaishi,H., et al.: "Precancerous hepatic nodules had significant levels of telomerase activity by sensitive quantitation using hybridization protection assay."Cancer. 88. 312-317 (2000)
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[Publications] Aikata,H., et al.: "Telomere reduction in human liver tissues with age and chronic inflammation."Exp.Cell Res.. 256. 578-582 (2000)
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[Publications] Kawakami,Y., et al.: "Immuno-histochemical detection of human telomerase reverse transcriptase in human liver tissues."Oncogene. 19. 3888-3893 (2000)
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[Publications] 井出利憲: "老化とテロメア"診断と治療. 88. 621-626 (2000)
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[Publications] 井出利憲: "不老不死細胞のメカニズムと応用"バイオインダストリー. 17・4. 37-47 (2000)