2000 Fiscal Year Annual Research Report
アクエアス・コンピューディングにおける大容量分子メモリの分子生物学的実装と応用
Project/Area Number |
12480084
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山村 雅幸 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助教授 (00220442)
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Keywords | 分子メモリ / DNAコンピューティング / アクエアス・コンピューティング / ペプチド核酸 / 鞭打ちPCR |
Research Abstract |
本研究の目的は、DNAコンピューティングの一種である、アクエアス・コンピューティングに基づく超並列計算の枠組みのもとで、より高度で現実的な工学的応用の基礎となる、分子メモリの大容量化とその応用にある。本年度の成果は大きく分けて次の2つからなる。 1)DNAへのPNAの侵入現象の信頼性確認実験 2本鎖DNAへのPNAの侵入現象について、DNA長さ、PNA長さ、DNA濃度、PNA濃度、反応量、温度、反応時間などを変化させて、侵入効率を調べ、大規模化の基礎検討データを収集した。PNAの受託合成の成否は配列設計に極めて敏感であり、かつ侵入現象の反応条件もDNAとPNAの精製度に強く依存するなど、当初予想していなかった困難があったが、侵入現象の再現に成功し、最初の1ビットを実現した。 2)メモリ状態の複製法の提案 萩谷らの鞭打ちPCR法を応用して、分子メモリの状態を複製する手続きを提案した。PNAは人工分子であるので、天然酵素によっては複製、分解ができない。このことから、当初、個々の実験操作のハンドリングエラーを最小限に抑えるための全自動核酸抽出装置の導入を計画していた。提案手法では、鞭打ちPCR法により、PNAの進入した部分をスキップするように複製が行われるため、PNAが侵入したDNA分子そのものが複製されるわけではないが、破壊書込みされたメモリーの状態が複製できる。複製された分子はDNAのみからなるので、随意に増幅することができる。これにより、マニュアル操作によっても、ハンドリングエラーの蓄積に頑健な計算手順の実現が期待できると判断し、補助金の使途を設備品の導入から主としてPNAの受託合成費用に変更することとなった。 以上のように、当初計画と比較して成果1)は予期せぬ困難があり若干遅れ気味であるが、成果2)は当初計画にはなかった画期的な提案として前者を補って余りあるものと考えている。
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[Publications] 山村雅幸: "分子メモリー-アクエアスコンピュータの分子生物学的実現"数理科学. No.445. 39-45 (2000)
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[Publications] 山村雅幸: "分子メモリの原理とその分子生物学的実現"第11回東工大脳研究シンポジウム講演予稿集. 6-11 (2000)
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[Publications] 山村雅幸: "DNA-PNAハイブリッドによるアクエアス・コンピューティングの実現"情報処理学会新しい計算パラダイムシンポジウム2000論文集(第7回MPSシンポジウム). 59-66 (2000)
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[Publications] 山村雅幸,広戸裕介,的場琢: "ペプチド核酸を用いた分子メモリの試作"計測自動制御学会第13回自律分散システムシンポジウム予稿集. 401-406 (2001)
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[Publications] Akio Nishikawa Masayuki Yamamura,Masami Hagiya: "DNA Computation Simulator Based on Abstract Bases"Soft Computing. (掲載予定). (2001)
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[Publications] 山村雅幸,Tom Head,Susannah Gal: "アクエアス・コンピューティング-分子メモリの計算原理と分子生物学的実現-"産業図書. (2000)