2001 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮細胞のマイクロメカニクス分析による動脈硬化局在化機構の解析
Project/Area Number |
12480270
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
辻岡 克彦 川崎医科大学, 医学部, 教授 (30163801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
望月 精一 川崎医療短期大学, 医用電子技術科, 助教授 (60259596)
梶谷 文彦 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (70029114)
小笠原 康夫 川崎医科大学, 医学部, 助教授 (10152365)
岩城 完三 林原生物化学研究所, 藤崎研究所, (研究職)サブディレクター
片岡 則之 川崎医療短期大学, 医用電子技術科, 講師 (20250681)
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Keywords | 内皮細胞 / 単球 / 動脈硬化 / マイクロメカニクス / 原子間力顕微鏡 |
Research Abstract |
動脈硬化病変発症の初期過程を明らかにするため、培養内皮細胞を用いた実験とラットを用いた実験を行った。ヒト臍帯静脈由来の内皮細胞を単層に培養し、インターロイキンで刺激して細胞接着因子を細胞表面に発現させて後、株化したヒト単球を共培養すると、内皮細胞に単球が付着した。このときの内皮細胞の動きを電気インピーダンス細胞動態解析装置で観察すると、単球付着により内皮細胞と基質間の距離が増大したが、細胞間の結合状態には変化が無かった。原子間力顕微鏡を用いてタッピングモードのプローブ押し込み試験により、単球付着による内皮細胞の堅さの変化を調べると、内皮細胞は単球付着により硬度が低下した。内皮細胞の内部では、単球付着によりストレスファイバーの減少と接着班の減少が見られた。以上、培養内皮細胞の実験により、単球が付着すると何らかの信号伝達系を介し、内皮細胞は細胞体が柔らかくなると共に基質から浮き上がった状態になることが判った。これは、内皮細胞が単球の働きかけに対応して、単球の内皮細胞下への進入を許容する状態に変化したものと考えられる。今後、信号伝達系の解明と単球の内皮細胞下への進入動態の解明を進める予定である。 ラットの大動脈・腎動脈分岐部をモデルとして、動脈硬化病変局在化における一酸化窒素(NO)の役割を検討した。大動脈・腎動脈分岐部では頭側に動脈硬化病変が好発する事、その部位の血流は、流れの剥離、逆流、時間平均の低づり応力により特徴付けられることが明らかにされている。NOの蛍光指示薬DAF-2を用いて分岐頭側の血管内皮細胞のNO産生量を調べると対照部位より減少していること、それが内皮由来のNO合成酵素の発現減少によることが明らかとなった。局所血流条件の違いが、内皮細胞におけるNO産生量の違いを介して動脈硬化病変の局在化に結びつく可能性が考えられる。
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[Publications] 片岡則之, 望月精一, 立花博之, 小笠原康夫, 辻岡克彦, 梶谷文彦: "単球付加時の内皮細胞間隙変化とタンパク構造変化"日本生理学雑誌. 63・4. 137 (2001)
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[Publications] Noriuki Kataoka: "Monocyte adhesion induced of endothelial cell-to-substrate distance and endothelial cell deformability"Japanese Circulation Journal. 65・Suppl. 143 (2001)
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[Publications] 片岡則之, 小笠原康夫, 辻岡克彦, 梶谷文彦: "原子間力顕微鏡を用いた単球付加時の血管内皮細胞の局所力学特性の計測"医用電子と生体工学. 39・Suppl. 497 (2000)
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[Publications] 望月精一: "血管内皮細胞および血管壁中のNO計測と動態評価"医用電子と生体工学. 39・Suppl2. 189-190 (2001)
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[Publications] 麻原仁子, 氷見直之, 辻岡克彦: "局所血流と血管内皮細胞機能の相互作用"第24回日本バイオレオロジー学会年会抄録集. 57 (2001)
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[Publications] 辻岡克彦, 麻原仁子, 氷見直之, 橋本 謙: "血管内皮細胞の構造・機能と局所血流_動脈硬化局在化機構"脈管学. 41・10. 739 (2001)