2001 Fiscal Year Annual Research Report
断層変位に対する交通施設の震災軽減対策に関する研究
Project/Area Number |
12555134
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川島 一彦 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (20272677)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 篤司 鉄道総合技術研究所, 研究開発推進室, 主査
翠川 三郎 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (00143652)
大町 達夫 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (90126269)
庄司 学 筑波大学, 機能工学系, 講師 (60282836)
田村 敬一 独立行政法人土木研究所, 振動研究室, 室長
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Keywords | 地震 / 断層 / 交通施設 / 震災対策 / 耐震設計 / 地震動 / 台湾・集々地震 / トルコ・ボル地震 |
Research Abstract |
本研究は,3m程度までの横ずれ,正,逆断層を対象に,基礎構造もしくは周辺地盤に塑性ヒンジを誘導する方式と地下免震構造を大規模に取り入れた方式の2つの方式を基本として,地盤上に建設される橋梁系構造物を断層変位から守るための地震被害軽減法を構築することを目標とする. 平成13年度には、以下の研究を行った。 (1)断層直近の地盤変位・変形特性に関する研究 1)過去の大地震での断層変位分布 1891年濃尾地震(M8.0)および1999年台湾集集地震(M7.7)の断層変位分布を整理したところ、断層沿いの各地点で観測された断層変位量は一様ではなく大きな変化がみられること、濃尾地震の場合には最大水平変位は8m、集集地震の場合には15mであるが、断層変位が報告されている地点のうちの半数以上では3m程度以下であることがわかった。 2)断層直上での地震動強さの調査 過去の被害記録や強震記録を整理し、断層直上の地震動強さは堅固な地盤上では最大地動速度で100cm/s程度、軟弱な地盤上では200cm/s程度にまで達しうることを示した。 3)2000年鳥取県西部地震による賀祥ダムの永久変位と貯水位変動 2000年10月6日に発生した鳥取県西部地震(MJ7.3)の際,震央近くにあった賀祥ダムの監査廊内で観測された強震記録を積分した結果、北へ約26cm、西へ約3cm、鉛直上方へ約3cmの残留変位が得られた。これらの変位は、ダムサイト周辺の地下に伏在する震源断層の食い違い変位に起因する地盤変位であることが検証された。一方、賀祥ダムの貯水位記録は、本震直後に6cmの水位低下を示した後、数時問にわたって減衰自由振動波形を描いた。この貯水位急低下は、上述の断層運動による地盤変位によって貯水池がダムに対して相対的に沈下したためであり、その後の自由振動は貯水池のセイシュ現象であることも検証された。 (2)断層変位に対する構造的被害軽減対策に関する研究 1999年トルコ・ボル地震により横ずれ断層と地震動の両者の作用によって激甚な被害を受けたボル高架橋を対象に、2軸塑性曲げを考慮したプッシュオーバーアナリシスおよび非線形動的解析によって断層による基礎構造の損傷メカニズムを検討した。この結果、断層線に近い杭では終局曲げ塑性変形能を遙かに上回る曲げ変形を生じ、せん断破壊も生じること、断層線から離れるに従って同一フーチング内でも損傷をほとんど受けない杭もあること、こうした場所ごとの変位の違いによって杭基礎には大きな回転変位を生じること、このような特徴は実際の被害状況とよく一致すること等を明らかにした。
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[Publications] 下山田英介, 川島一彦: "断層変位を受ける杭基礎の耐震性"第1回日本地震工学会研究発表討論会. 1. 252 (2001)
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[Publications] 川島一彦: "トルコ・ドュツェ地震によるボル高架橋の被害"橋梁と基礎. 2001-2. 25-30 (2001)
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[Publications] 川島一彦: "リオン-アンティリオン橋の耐震設計"橋梁と基礎. 2001-3. 33-36 (2001)
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[Publications] Kawashima, K., Shoji G.: "Damage of Transportation Facility in the 1999 Kocaeli and Duzce, Turkey Earthquakes and the 1999 Chi-Chi, Taiwan Earthquake"32th Joint Meeting of US-Japan Panel on Wind and Seismic Effects, UJNR, Gaithersburg, MD, USA, NIST Special Publication, National Institute of Standards and Technology, US Department of Commerce. 963. 439-462 (2001)
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[Publications] Kawashima, K.: "Damage of Bridges Resulting from Fault Rupture in the 1999 Kocaeli and Duzce Turkey, Earthquakes and the 1999 Chi Chi, Taiwan Earthquake"Workshop on Seismic Fault-induced Failures, University of Tokyo. 171-190 (2001)
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[Publications] Kawashima, K.: "Damage of Bridges Resulting from Fault Rupture in the 1995 Kocaeli and Duzce, Turkey Earthquakes and the 1999 Chi-Chi, Taiwan Earthquake"Technical Report, Department of Civil Engineering, Tokyo Institute of Technology. 63. 1-23 (2001)
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[Publications] 下山田英介, 川島一彦: "断層変位を受ける杭基礎構造の耐震性に関する検討"第5回地震時保有耐力法に基づく橋梁の耐震設計に関するシンポジウム. 5. 203-210 (2002)
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[Publications] 翠川三郎, 藤本一雄: "2000年鳥取県西部地震の震源域での地震動強さ"日本建築学会構造系論文集. 549. 59-65 (2001)
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[Publications] 野畑有秀, 翠川三郎: "強震記録に基づく震源近傍での地震動強さ"構造工学論文集. 47B. 173-180 (2001)
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[Publications] 野畑有秀, 翠川三郎: "木造家屋の全壊率分布より推定した1948年福井地震の震源近傍における地震動強さ"日本建築学会構造系論文集. 553. 27-32 (2002)
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[Publications] 大町達夫, 小島直之: "2000年鳥取県西部地震時における賀祥ダムの強震記録について"第26回地震工学研究発表会講演論文集、土木学会. 1. 333-336 (2001)
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[Publications] 大町達夫, 村上 敦: "賀祥ダムの水位記録に見られる鳥取県西部地震の影響"第26回地震工学研究発表会講演論文集、土木学会. 1. 337-340 (2001)
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[Publications] 辻 直子, 大町達夫: "断層極近傍における地震被害と地盤震動特性の関連性"第26回地震工学研究発表会講演論文集、土木学会. 1. 541-544 (2001)
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[Publications] 大町達夫, 松本浩幸, 築山 洋: "震源断層の破壊過程が津波に及ぼす影響"海岸工学論文集. 48. 331-335 (2001)
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[Publications] 田村敬一, 片岡正次郎: "想定地震に基づくレベル2地震動の設定手法について"第26回地震工学研究発表会講演論文集、土木学会. 26. 405-408 (2001)
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[Publications] 片岡正次郎, 田村敬一: "想定地震に基づくレベル2地震動の試算"第26回地震工学研究発表会講演論文集、土木学会. 26. 401-404 (2001)
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[Publications] 吉田仁司, 田村敬一, 中尾吉宏: "地震動特性を考慮した非線形応答の推定とその応用"第5回地震時保有水平耐力法に基づく橋梁の耐震設計に関するシンポジウム講演論文集、土木学会. 5. 1-6 (2002)
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[Publications] 中尾吉宏, 田村敬一, 村越潤, 吉田仁司: "構造物の塑性化を考慮した設計地震動"第1回日本地震工学研究発表会・討論会梗概集、日本地震工学会. 1. 66 (2001)