2001 Fiscal Year Annual Research Report
高分子・金属多層薄膜界面評価装置の開発(短パルス化低速陽電子ビーム装置の開発)
Project/Area Number |
12555270
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Research Institution | The High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
鈴木 健訓 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 教授 (40162961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沼尻 正晴 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (20189385)
三浦 太一 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 助手 (80209717)
近藤 健次郎 高エネルギー加速器研究機構, 共通研究施設, 教授 (20004434)
何 春清 高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, COE研究員
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Keywords | 陽電子消滅 / ポジトロニウム / パルス化 / 薄膜 / 高分子 / 多層膜 / 多層膜境界面 / 低速陽電子 |
Research Abstract |
陽電子消滅法の手法の中で陽電子寿命測定法は、金属の欠陥や高分子の空隙の大きさを定量的に推定する上で、重要な手法である。低速陽電子ビームを用いると表面や薄膜の研究に応用することが出来るので、簡単に効率のよいビームを発生する装置製作は、一層の発展に寄与する。本研究は放射性同位元素を用いた低速陽電子発生装置を製作し、高分子材料の表面の研究を行なうことを目的としている。この装置は、小型・安価な装置で、小さな化学実験室で、自由に使える装置で、デスクトップの大きさである。本研究ではこのような条件を満たす低速陽電子短パルス化装置を開発することが第1の目的である。次にこの装置を使い、高分子材料の表面研究を行なうことを目的としている。今年度は、半値幅が0.5〜0.6nsのビームを用いて実験を行なった。この半値幅では金属中の陽電子寿命を得ることは出来ない。高分子材料の場合、寿命は2ns程度であり、この半値幅でも十分に測定可能である。応用として、エポキシ樹脂をシリコン板上にスピンコートした薄膜に(45nm、1μm)、低速陽電子ビームを照射した。極表面では、陽電子或いはポジトロニウムが真空中に再放出して、長い寿命が得られる。強度は表面で減少し、内部に入るに従い、増加する。45nmの薄膜では1kV付近の電圧で長寿命が減少する。1μmの膜では、2kV以上の加速で打ち込まれた陽電子は、表面の影響がなくなり、バルクの特性を示している。室温(25℃)から200℃までの温度変化を測定すると、表面付近(〜50nm)のガラス転移温度(Tg)は、内部(バルク)のTgより低い温度になっていることが分かった。本装置は高分子材料の寿命測定に使えるが、汎用性を持たせるために、半値幅を0.3ns程度に改良し、さらに、短パルス化を改善する改良が必要である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 鈴木健訓, 伊藤泰男, 他: "Temperature and radiation effect on positronium formation"Radiation Physics and Chemistry. 60. 535-540 (2001)
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[Publications] 濱田栄作, 鈴木健訓, 他: "Application of pulsed slow-positron beam to low-density polyethylene film"Acta Physica Polonica. 99. 373-378 (2001)
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[Publications] 鈴木健訓, 伊藤泰男, 他: "Polymerization of epoxy resins studied by positron annihilation"Material Research Innovations. 4. 273-277 (2001)
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[Publications] 鈴木健訓, 他: "Radiation effects on positronium formation"Acta Physica Polonica. 99. 515-522 (2001)
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[Publications] T.Goworek, B.Jasinska, T.Suzuki: "Ortho-Ps in Bi-Dispersional Porous Glass"Material Science Forum Volume. 363-365. 316-318 (2001)
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[Publications] Z.Q.Chen, T.Suzuki, 他: "Free Volume in Polycarbonate Studied by Positron Annihilation : Effects of Free Radicals and Trapped Electrons on Positronium Formation"Jpn. J. Appl. Phys.. 40. 5036-5040 (2001)