2001 Fiscal Year Annual Research Report
牛ネオスポラ症の感染様式とヒトへの伝播の可能性の検討
Project/Area Number |
12556052
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
梅村 孝司 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (00151936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 仁志 北海道大学, 医学部・附属病院, 講師 (70197622)
島田 章則 鳥取大学, 農学部, 教授 (20216055)
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Keywords | Neospora caninum / ネオスポラ症 / 牛の流産 / 潜伏感染 / ステロイドホルモン |
Research Abstract |
Neospora(N.)caninumは牛に流産を起こす原虫で、わが国の畜産にも大きな被害を与えている。潜伏感染母牛では、妊娠期間中に再活性化した原虫が経胎盤し、幾世代にもわたって維持されると考えられている。本年度は、潜伏感染した母牛から胎子へ経胎盤感染するメカニズムを明らかにするため、以下の2つの実験を行った。 実験1では、感染後70日が経過し、無症状だが抗体価を維持している潜伏感染マウスを作出し、妊娠および免疫抑制に伴って原虫の再活性化および垂直伝播が起こるかどうかをPCR法を用いて検索した。また、これに伴う抗体価の変動をELISA法によって調べた。その結果、潜伏感染マウスの胎子および産子の脳と血液N.caninumのDNAが高頻度に検出され、経胎盤感染が証明された。また、出産直後から約1カ月間にわたって、母マウスの血液からN.caninum DNAが検出された。母マウスの抗体価は、妊娠20日目に急激に上昇し、その後は徐々に低下した。さらに、プレドニゾロンによる免疫抑制によっても、脳に潜伏感染した原虫が再活性化し、原虫血症が起こることが証明された。 潜伏感染個体で原虫が再活性化し、経胎盤感染を起こす理由として、妊娠に伴うホルモン環境の変動が最も疑われた。そこで、実験2では、妊娠期間中に大きく変動するステロイドホルモン(プロジェステロン、17β-エストラジオールおよびコルチコステロン)の原虫増殖への影響を、in vitroおよびin vivo(潜伏感染マウス)の系を用いて検討した。その結果、生理学的濃度のステロイドホルモンによってN.caninumの再活性化は起こらず、妊娠期間中の原虫血症はステロイドホルモン以外のファクターによって惹起されることが分かった。 これらの結果は、2報の論文として、雑誌(J Vet Parasitol ; J Vet Med Sci)投稿中である。
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