2002 Fiscal Year Annual Research Report
脳低温により発現する虚血脳保護遺伝子の探索とその治療的応用
Project/Area Number |
12557117
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
三谷 章 京都大学, 医療技術短期大学部, 教授 (50200043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 護 ディナベック研究所, 所長(研究職)
田中 光一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (80171750)
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Keywords | 脳低温 / 虚血 / ニューロン死 / 遺伝子 / 海馬CA1野 |
Research Abstract |
前年度までの研究によって開発された自動脳低温制御システムを用いることにより一過性脳虚血負荷後24時間に亘って動物の脳温を32℃に維持することが可能となり、さらにそのような処置により一過性脳虚血負荷後発生する海馬CA1野虚血性遅発ニューロン死を完全に防御できることが明らかとなった。本年度は、この防御機構の作用機序を解明するために、分子生物学的手法を用いて脳低温処置により脳内に発現する虚血脳保護遺伝子の検索を行った。スナネズミに脳温37℃で5分間の一過性脳虚血を負荷し、海馬CA1野に遅発性ニューロン死の発生を誘導した。自動脳低温制御システムを用いて虚血負荷1時間後から動物の脳温を24時間連続して32℃に維持した。その海馬CA1野および脳低温処置を施さなかった動物の海馬CA1野を採取した。両群の海馬CA1野からそれぞれmRNAを抽出し、cDNAを調整・増幅した後、Subtractive hybridization、クローニングを行い、さらにDifferential screeningで陽性であった遺伝子についてDNAシークェンスを行った。その結果、遅発性ニューロン死の発生が誘導された海馬CA1野においては、アポトーシス関連遺伝子を始め数多くの遺伝子の発現が観察された。そして、低温処置を施した海馬CA1野では虚血海馬CA1野とは発現の程度が異なるいくつかの遺伝子が観察された。特にTyrosine phosphatase(receptor type)に関して、遺伝子発現の顕著な差が認められた。このTyrosine phosphataseは虚血ニューロン死の発生過程あるいは防御過程において重要な役割を果たしている可能性が高い。今後、その機能を検索する必要がある。
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