Research Abstract |
スナネズミ一過性前脳虚血モデルでは,再潅流1時間後より32℃,24時間の長時間の脳低温処置を施すと,虚血ニューロン死が発生しない。蛋白質トレーサーであるEB(エバンスブルー)を用いて,脳低温処置モデルの血液脳関門障害の程度を定量分析した。単純虚血群では虚血4日後をピークに,前頭葉,頭頂葉,海馬CA1などに強いEBの漏出が観察されたが,脳低温処置群ではEBの漏出は脳全領域で顕著に減少し,低温処置に強い血液脳関門の破綻抑制作用が認められた。 培養ミクログリアにおいては,ホルボルエステル(PMA)刺激で活性酸素が産生され,リポポリサッカライド(LPS)刺激によりTNF-αやNOが産生されるが,いずれの反応においても培養液に血清を添加すると,その反応が増強された。ミクログリアの活性酸素産生能の増強因子は,活性化の最小単位がアルブミンのテトラフラグメントであるLHTHであり,TNF-αやNO産生能の増強因子は,炎症急性期の血清に存在するLPS結合蛋白(LBP)である可能性が示唆された。また,活性化を受けたミクログリアは,盛んに細胞増殖し,サイトカイン類やラジカル類を産生した後,アポトーシスによりその数を減らし沈静化すると考えられているが,アデノシンのアナログである2Cl-adenosineを培養ミクログリアに添加すると,アポトーシスを誘導することも判明した。 新規脳保護薬の開発の可能性についても模索した。予備実験の結果,緑茶の旨味成分であるテアニンにニューロン保護効果があることが判明している。虚血負荷後の短時間低温処置(32℃,5時間)と軽微低温処置(35℃,24時間)動物では軽度〜中等度のニューロン保護作用があるが,テアニンの併用投与によるニューロン保護の相乗効果について検討した。対照群,短時間低温処置群,軽微低温処置群,短時間低温処置+テアニン投与群,軽微低温処置+テアニン投与群の残存神経細胞数は,それぞれ5%,19%,50%,67%,72%で低温処置とテアニンの併用投与により有意なニューロン保護効果が得られた。
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