2002 Fiscal Year Annual Research Report
抗原エピトープ高次構造に基づく新奇な抗歯周病合成ワクチンの開発
Project/Area Number |
12557188
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
伊藤 博夫 鹿児島大学, 歯学部, 助教授 (40213079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 敏博 化学及血清療法研究所, 主任研究員
五月女 さき子 鹿児島大学, 歯学部附属病院, 助手 (20325799)
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Keywords | 歯周病 / 成人性歯周炎 / Porphyromonas gingivalis / 免疫 / モノクローナル抗体 / 線毛 / ワクチン / ファージディスプレイ・ペプチドライブラリー |
Research Abstract |
我々の作製したモノクローナル抗体(mAb)pfyx206は、成人性歯周炎の原因菌として重要視されるPorphyromonas gingivalisの線毛多量体の高次構造をエピトープとして認識し、本菌のヒト口腔上皮細胞への定着を抑制する。同様の機能を持つ抗体を宿主に誘導するための合成ワクチンの創製を最終的な目標として、ファージ・ディスプレイ・ランダムペプチドライブラリーを用いた探索により、本mAbによって認識されるファージクローンが同定され、それに挿入された、線毛の1次構造と部分的に相同性を示す18merペプチド配列(QAAAQDVWGVHTAGSAAG)が、線毛の立体構造エピトープを模倣している可能性が示唆されている。当ペプチドをそのまま化学的に合成することは不可能であったので、本年度は、エピトープに関係のある可能性の低い配列を削除した11mer(QDVWGVHTAG)を、可溶性の環状ペプチド(biotin-GGGGCQDVWGVHTAGC)としての合成に成功した。しかしながら、この環状ペプチドとmAbとの結合は認められなかった。このように、ファージ表面に発現される機能性ペプチドとして選択されてきた配列ではあっても、単独のペプチドとしては発現されなかったり、発現はしても機能を発揮できない例がこれまでにも報告されている。このような場合に対して有効性が報告された、大腸菌のマルトース結合タンパク質(MBP)との融合体としての発現系を、当ペプチドに適用した。そのためにMBP遺伝子のクローニングを行い、pTrc99AをベースにMBPのアミノ末端側にペプチドが組み込まれるよう、新たなベクターを構築し、上記の18mer直鎖状ペプチドと11mer環状ペプチドのMBP融合体を作製した。直鎖状ペプチド-MBP融合体は可溶性タンパク質として発現することができ、mAbと弱いながらも特異的な結合が確認された。すなわち、構築したMBP-ペプチド融合タンパク発現系は、単独では不安定なペプチドの構造および機能を安定化し、免疫原として供給する上で有効な方法であることが示唆された。
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