2000 Fiscal Year Annual Research Report
ペプチド輸送系の組織特異的発現と分子認識多様性を利用した腫瘍選択的薬物デリバリー
Project/Area Number |
12557204
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
辻 彰 金沢大学, 薬学部, 教授 (10019664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
崔 吉道 金沢大学, 自然科学研究科, 助手 (40262589)
玉井 郁巳 金沢大学, 自然科学研究科, 助教授 (20155237)
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Keywords | オリゴペプチド / トランスポーター / 抗がん剤 / ベスタチン / グリシルサルコシン / 腫瘍 / ヌードマウス / トラックデリバリー |
Research Abstract |
ペプチドトランスポーターを利用した選択的な抗がん剤デリバリーの可能性を検証する目的で以下の検討を行った。 1.ヒト小腸オリゴペプチドトランスポーターhPEPT1cDNAあるいは空の発現ベクターをHeLa細胞に遺伝子導入し、強制発現細胞(HeLa-hPEPT1)およびmock細胞を得た。HeLa-hPEPT1細胞におけるhPEPT1mRNAの発現はRT-PCRによって確認した。HeLa-hPEPT1へのペプチド性抗がん剤[^3H]ベスタチン取り込み活性について検討を行ったところ、mock細胞と比較して約5倍に増加し、非標識のベスタチンの共存による阻害効果、pH依存性等がみられ、hPEPT1が有する輸送活性が再現された。 2.Balb/c nu/nuマウスの背部皮下にHeLa-hPepT1を移植した担がんマウスに、ベスタチンおよび[^3H]カルノシンを投与し30分後の組織移行性を検討した結果、組織対血漿中濃度比(Kp値)がそれぞれ2.0および2.5と算出された。これらの値は細胞間液のみ分布する[^<14>C]イヌリンの値と比べ有意に高く、両ペプチドが腫瘍細胞内に取り込まれていることが示された。mock細胞へのペプチドの蓄積は観察されたなかった。 3.in vitroでのベスタチンに対する感受性の変化をMTT法により検討したところ、HeLa-hPEPT1細胞については2.2μg/ml以上の濃度において顕著な増殖抑制効果がみられた。一方mock細胞については検討を行ったベスタチン濃度(0.22〜222μg/ml)でほとんど変化がみられなかった。in vivo実験として担がんマウスにベスタチン(0.5mg/kg)を28日間経口投与した結果、HeLa-hPEPT1を移植した腫瘍の増殖はmock細胞の腫瘍に比べて顕著に抑制された。 以上の結果より、がん細胞にhPEPT1が発現することによりペプチド性化合物の蓄積および感受性が上昇することが示された。 4.がん細胞に発現するOCTN、OATP等のトランスポーターのクローニングならびに機能特性解析、種々トランスポーター群の体内動態制御への利用法についての検討も行った。
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Research Products
(15 results)
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[Publications] Nakanishi,T.: "Cancer cell-targeted drug delivery utilizing oligopeptide transport activity"Int.J.Cancer. 88・2. 274-280 (2000)
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[Publications] Hirohashi,T.: "Function and expression of multidrug resistance-associated protein family in human colon adenocarcinoma cells (Caco-2)"J.Pharmacol.Exp.Ther.. 292・1. 265-270 (2000)
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[Publications] Ogihara,T.: "Structural requirement of substrates for stereoselective monocarboxylate tranaport in Caco-2 cells"Pharm.Pharmacol.Commun.. 6. 161-165 (2000)
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[Publications] Tamai,I.: "Molecular and functional characterization of organic cation/carnitine transporter family in mice"J.Biol.Chem.. 275・51. 40064-40072 (2000)
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[Publications] Mayatepek,E.: "Two novel missense mutations of the OCTN2 gene (W283R and V446F) in a patient with primary systemic carnitine deficiency"Hum.Mutat.. 15・1. 118 (2000)
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[Publications] Tamai,I.: "Molecular identification and characterization of novel members of the human organic anion transporter (OATP) family"Biochem.Biophys.Res.Commun.. 273・1. 251-260 (2000)
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[Publications] Tamai,I.: "Transporter-mediated permeation of drugs across the blood-brain barrier"J.Pharm.Sci.. 89. 1371-1388 (2000)
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[Publications] Sai.Y.: "Selective delivery of peptide anticancer drugs via oligopeptide transporter expressed in cancer cells"Millenial World Congress of Pharmaceutical Sciences Abstracts. 61 (2000)
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[Publications] 辻彰: "薬物の生体膜輸送機構解析を基盤とした体内動態制御に関する研究"薬物動態. 15. 112-135 (2000)
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[Publications] 辻彰: "消化管吸収過程における薬物間相互作用"月刊薬事. 42. 287-293 (2000)
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[Publications] 辻彰: "薬物の血液脳関門透過性の改善"Pharm.D.. 2. 1-5 (2000)
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[Publications] 玉井郁巳: "小腸上皮トランスポーター群の分子機構論的解析と薬物の経ロデリバリーへの応用"薬学研究の進歩. 16. 77-88 (2000)
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[Publications] 玉井郁巳: "トランスポーターが関与する薬物動態と病態"薬事新報. 2141. 9-15 (2000)
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[Publications] 玉井郁巳: "OCTNトランスポーターファミリーの組織分布・輸送の多様性"薬物動態. 15. 182-188 (2000)
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[Publications] 玉井郁巳: "新・ドラックデリバリーシステム"トランスポーターとドラックデリバリーシステム""シーエムシー. 13 (2000)