2000 Fiscal Year Annual Research Report
プロスタグランジンD合成酵素の結晶構造解析と阻害剤開発
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12558078
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Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
裏出 良博 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究部長 (10201360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
望月 貴年 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究員 (40263933)
早石 修 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究員 (40025507)
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Keywords | プロスタグランジンD2 / トランスジェニックマウス / 好酸球 / Th2サイトカイン / 肥満細胞 |
Research Abstract |
プロスタグランジン(PG)D2は、睡眠誘発や痛覚修飾などの中枢作用を示し、同時に、炎症メディエーターとして肥満細胞から放出される。我々は、それぞれ、中枢神経系と免疫担当細胞に局在し、睡眠調節やアレルギー反応の鍵を握る酵素であるマウス・リポカリン型PGD合成酵素(PGDS)およびヒト・造血器型PGDSの遺伝子組換え型酵素の結晶化に成功した。そして、高エレルギー研究所及びSPring-8放射光施設での高分解能X線結晶回折像の収集を行い、2.5Å程度の分解能の三次元構造座標を決定した。さらに、リポカリン型および造血器型PGDSと3種類の阻害剤との複合体の結晶化にも成功し、造血器型酵素複合体については放射光でのX線結晶回折像の収集を行い1.2から1.8Å分解能の三次元構造座標を決定した。次に、阻害剤の有効性の検討に使用するヒト培養細胞のスクリーニングを行い、TE671細胞がリポカリン型PGDSを、CMK細胞が造血器型PGDSを発現することを確認し、一部の阻害剤がこれらの培養細胞におけるPGD2生産を阻害することを証明した。さらに、ヒト型PGDSを大量発現するトランスジェニック(TG)マウスを用いて、ヒトPGDSに対する阻害剤のin vivo薬効評価系を開発した。つまり、ヒト・リポカリン型PGDS-TGマウスでは、遺伝子解析のために行う尾末端の切断に伴う痛覚刺激により、刺激後3時間をピークとして5時間に及ぶ、脳内PGD2濃度の上昇を伴う徐波睡眠の増加が起きることを見出した。これは、世界で初めて確立された徐波睡眠の異常モデル動物であり、眠気の蓄積を押える「居眠り防止薬」としてのPGDS阻害剤の薬効評価系として有効である。一方、ヒト・造血器型PGDS-TGマウスでは、卵白アルブミン感作を用いたアレルギー性気管支喘息モデル実験において、肺におけるPGD2産生の亢進による、肺への好酸球の浸潤や肺胞洗浄液中のTh2サイトカインの上昇が亢進した。これは、「坑喘息薬・坑アレルギー薬」としてのPGDS阻害剤の薬効評価系として使用である。これらの研究成果により、臨床応用が期待されるPGDS阻害剤リード化合物の開発条件が整備された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Kanaoka,Y., et.al.: "Structure and chromosomal localization of human and mouse genes for hematopoietic prostaglandin D synthase."Eur.J.Biochem.. 267. 3315-3322 (2000)
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[Publications] Pinzar,E.I., et.al.: "Structural basis of hematopoietic prostaglandin D synthase activity elucidated by site-directed mutagenesis."J.Biol.Chem.. 27. 31239-31244 (2000)
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[Publications] Fujimori,K., et.al.: "Transcriptinal activation of the human hematopoietic prostagalndin D synthase gene in megakaryoblastic cells."J.Biol.Chem.. 275-51. 40511-40516 (2000)
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[Publications] Urade,Y.and Hayaishi,O.: "Biochemical, structural, genetic, physiological, and pathophysiological features of lipocalin-type prostaglandin D synthase."Biochim.Biophys.Acta. 1482. 259-271 (2000)
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[Publications] Urade,Y.and Hayaishi,O.: "Prostaglandin D synthase : structure and function."Vitamins and Hormones. 58. 89-120 (2000)
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[Publications] Pinzar,E.I., et.al.: "Prostaglandin D synthase gene is involved in the regulation of non-rapid eye movement sleep."Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 97. 4903-4907 (2000)