2000 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナム戦争はどう記憶され、どう語られるか その現場(フィールド)心理学的検討
Project/Area Number |
12571005
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
伊藤 哲司 茨城大学, 人文学部, 助教授 (70250975)
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Keywords | ベトナム / ベトナム戦争 / 記憶 / 語り / 戦争の物語 |
Research Abstract |
研究計画に基づいて、ベトナムでの現地調査を2回にわたって行った。期間は2000年8月16日〜9月1日および2000年12月24日〜30日である。(なお研究分担者として参加している別の科学研究費によって、2001年3月13日〜20日までベトナムに渡航した際にも、当該の研究の妨げにならない範囲で、当研究の調査を継続して行った。) ベトナムでの在外研究(1998年5月〜1999年2月)の経験と人脈を活かしながら、元北ベトナムの兵士など10人(女性も含む)に本研究の主旨に同意してもらって、聞き取り調査を行った。なお聞き取りは、日本語に堪能なベトナム人(日本に留学経験のある人)に通訳をしてもらいながら行った。対象者の自宅まで出向き、ができるだけリラックスして自由に語れる雰囲気をつくるよう心掛けた。生まれた年や出生地などはもちろんのこと、入隊した年齢、入隊後の転戦地、その転戦地での生活の様子、病気や怪我、現在の自分や家族にとっての戦争体験の意味づけなどを語ってもらった。1回の聞き取りにかけた時間は、1時間から3時間ほどである。なお2回にわたって聞き取りをお願いできた対象者もいた。 重たいテーマであるだけに、最初は本研究の目的などをいぶかる対象者もいたが、いずれの対象者も最終的には、戦争を知らない外国人である研究者に対して、語って聞かせるという調子で話を聞かせてくれた。大変困難で苦しい戦いをしながらも、国の独立と自由を勝ち取る戦いのためにプライド高く闘った様子が窺え、またそのような戦いのなかでの生活が「みなが協力しあい団結していて、楽しかった」と異口同音に語ったのが一番印象的であった。 今回は主に、ベトナムの北側で調査を行ったわけだが、南側で行えば、またかなり違ったベトナム戦争の物語が語られることであろう。戦争は、一方の正義が他方の不正義として映りやすい事象であるからである。北側で同じ対象者に対しても、再び会って話を聞きたいと考えているが、2年目の来年度は、南側での調査に力を入れたいと考えている。 また、ベトナム戦争関連の資料(ベトナム語・英語などによる書籍・ビデオなど)を大量に購入した。その内容分析をこれから行うところである。
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