スウェーデンにおける地方自治と福祉行政

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 12572012
• Research Institution: Doshisha University
• Principal Investigator: 多田 葉子 同志社大学, 文学部, 専任講師 (70319458)
• Keywords: 地方自治体 / 福祉行政 / 福祉財政 / 福祉民営化 / 過疎自治体 / 福祉と医療の統合 / 高齢者福祉 / 福祉の国際化

Research Abstract

本研究は、スウェーデンにおける地方自治と福祉行政の研究を中心としている。特に福祉の民間委託、過疎自治体、福祉と医療の統合、福祉の国際化などに焦点を当て調査を行っている。スウェーデンにおける福祉提供方法の多様化が予想以上に顕著であるので、平成12年度は民間委託の問題と合わせて、平成14年度に予定していた過疎自治体調査も並行して開始した。平成13年度は、過疎自治体の研究と並行して、特に三大都市の一つであるマルメ市の調査を中心に行った。マルメ市は、コペンハーゲンから電車で15分という地理的条件もあり、ヨーロッパ大陸からの影響を受けやすい地域である。民営化についても、最初に本格的に取り組んだのもマルメ市であると言えよう。マルメ市の高齢者福祉や児童福祉の提供方法は、北スウェーデンの自治体とは、かなり異なっている。民営化については、一部民間委託をコミューン経営に再び戻すなど、多少の調整状況にあると考えられる。また、マルメにおいては、「福祉の国際化」あるいは「福祉の多国籍化」といった状況が顕著である。すなわち、福祉提供者および福祉サービス受給者の双方が、多国籍化している。こうした多国籍化にたいする適切な対応が試行錯誤されている。
スウェーデンの福祉は、従来公共セクター(特に地方自治体)が責務を負い、その提供についても公共セクターが中心的役割を担ってきた。しかし、90年代に入りEUに加盟したことからも、福祉の一部分野について民間委託を行うなど、提供方法に多様な形態が見られるようになってきた。たとえばマルメ市は、民営化の進行している都市であり、北スウェーデンのヴィルヘルミーナ市やドロテア市は、過疎自治体であり、従来の公共セクター中心主義を貫いている。
現段階で、結論を述べるのは早急であるが、スウェーデン福祉が、多様な手段を模索しているのは明らかであるようだ。各地方自治体が限りある財源で、どのようにして、必要な福祉サービスを効率的にそして住民にとって平等に提供するかが課題である。各自治体の状況を明らかにするには、さらに同調査を継続する必要がある。