2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12572012
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Research Institution | DOSHISHA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
多田 葉子 同志社大学, 文学部, 助教授 (70319458)
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Keywords | 地方自治体 / 福祉行政 / 福祉財政 / 福祉民営化 / 過疎自治体 / 福祉と医療の統合 / 高齢者福祉 / 年金改革 |
Research Abstract |
本研究は、スウェーデンにおける地方自治と福祉行政の研究を中心とし、90年代以降、福祉国家スウェーデンがどのような動向をたどっているかを考察している。 まずはじめに、地方自治体中心の福祉サービス提供にどのような変容が見られるだろうか。90年代に入って民間サービスを活用するコミューンがでてきたが、活用度は社会サービスの種別によっても、自治体によっても異なる。また民間サービスの活用といっても、あくまでもサービスの最終責任は自治体にある。したがって、90年以前に比べると一部民間サービスの参入が認められるが、他国との比較では依然として公的サービス中心主義をとっている。 また、90年代以降の傾向として、自治体によるサービス提供方法によりバリエーションがでていたとも言えよう。すなわち、人口の比較的多い大都市では民間サービスの活用がみられ、人口過疎の北部スウェーデンではオーソドックスな公的サービス中心主義が継続されている。また過疎地域におけるサービスの質確保のためには、財政基盤を整えることが必須である。このために、自治体間の補助金制度が大きな役割を果たしている。 さらに、医療と福祉の統合という視点においても90年代に大幅な改革が行われている。たとえば高齢者の社会サービスと一部医療を統合した「エーデル改革」はその一例である。このような福祉サービスと医療(特に看護部分)の統合は、コミューンにおける組織変更や専門職員の技能向上を促している。 なお、スウェーデン型地方分権社会では、所得保障については国がその直接的責任を負ってきた。最近の年金改革は、経済低成長期の少子高齢社会において、どのように財政問題と折り合いながら所得保障を実現していくかという点で興味深い。このような国による所得保障と自治体による社会サービスは、相互補完関係にあり、市民の生活保障としての社会保障を構成している。
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[Publications] 多田葉子: "スウェーデンの介護制度"地域に根ざした介護制度の構築に向けて 日本都市センター. 43-51 (2001)
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[Publications] 多田葉子: "医療経済関連事項 -最近の動向について-"スウェーデン医療関係データ集 医療経済研究機構. 2001. 104-107 (2002)
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[Publications] 多田葉子: "スウェーデンの年金制度 -低経済成長・少子高齢社会の年金制度- 第1回"エイジング エイジング総合研究センター. 夏号. 42-47 (2003)
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[Publications] 多田葉子: "スウェーデンの年金制度 -低経済成長・少子高齢社会の年金制度- 第2回"エイジング エイジング総合研究センター. 秋号. 32-37 (2003)
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[Publications] 多田葉子: "スウェーデンの年金制度 -低経済成長・少子高齢社会の年金制度- 第3回"エイジング エイジング総合研究センター. 冬号. 16-22 (2003)
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[Publications] 多田葉子: "スウェーデンの年金制度 -低経済成長・少子高齢社会の年金制度- 第4回"エイジング エイジング総合研究センター. 春号. 38-43 (2004)