2000 Fiscal Year Annual Research Report
EU諸国におけるホームレスの実態をその対応策についての研究
Project/Area Number |
12572019
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
福原 宏幸 大阪市立大学, 経済学部, 教授 (20202286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小玉 徹 大阪市立大学, 経済研究所, 教授 (00170267)
櫓谷 美恵子 大阪市立大学, 生活科学部, 助教授 (60238318)
中村 健吾 大阪市立大学, 経済学部, 助教授 (70254373)
中山 徹 大阪府立大学, 社会福祉学部, 教授 (40237467)
都留 民子 広島女子大学, 生活科学部, 助教授 (00236952)
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Keywords | ホームレス / 貧困 / 失業 / 社会的排除 / 公的扶助 / 居住権 |
Research Abstract |
本年度は、ドイツ、イギリス、フランスそしてアメリカでの現地調査を実施した。各国のホームレスの実態、そして行政機関、支援NPOの活動について、各国それぞれ10〜15団体(および研究者)を訪問し、聞き取り調査を行った。来年度は、これらのデータを整理し、それらを比較研究する中で、各国のホームレス実態と政策の特徴を浮き彫りにしていきたい。以下では、今年度の研究から得た点を整理しておきたい。 まず第1に、EU諸国では、ホームレスの概念が日本と比べ広く捉えられている。したがって、支援政策も単に路上生活者に限定せず、「社会扶助施設・緊急施設・支援団体に宿泊する者」、「家族、友人宅に寄宿する失業者」、母子施設などの「若年母子世帯」、施設居住の「40歳以上の単身者」、「車中生活の家族」なども含まれる。このことから、支援事業は、一般法の枠内で行われている。これに対し、アメリカは、おおむねEU諸国と同様のホームレス概念であるが、路上生活者が多いことから、政策は路上生活ホームレスに対する特別法の枠内で行われている。 第2に、EU諸国では、ホームレスを捉える視点また政策理念(「社会的排除」と「社会への参入」)では共通しているが、その具体的政策になるといくつか異なっている。ドイツでは連邦制国家であることから、各地域ごとに政策が多様である。イギリスはブレア政権のもとソシアル・エクスクルージョン・ユニットが組織され、重点的政策課題として取り扱われている。また、フランスでは反排除法の制定(1998年)にともなって、従来の支援策を継承しつつさらに強力にそれを推し進めようとしている。 また第3に、EU諸国・アメリカに共通していることだが、民間のNPO組織による支援活動がきわめて活発に行われていることも注目に値する。これは、多くの市民が、ホームレス問題を社会全体の重要課題であると認識していることの現れであろう。
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[Publications] 檜谷美恵子: "フランスにおける「連帯と都市再生」法案をめぐる論議"月刊住宅着工統計. 187号. 19-20 (2000)
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[Publications] 小玉徹,中村健吾,福原宏幸: "日本ホームレス原論-イギリス・ドイツとの比較"エコノミスト. 3月13日号. 72-75 (2001)
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[Publications] 都留民子: "フランスの「連帯」と「排除との闘い」から思うこと"シェルターレス. 9号(未定)(発表予定). (2001)
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[Publications] 中村健吾: "ドイツにおける「家なし人」の現状と支援策-ベルリン州を中心に-"経済学雑誌(大阪市立大学経済学会). 102巻2号(未定)(発表予定). (2001)
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[Publications] 中山徹: "イギリス環境交通地域省ラフスリーパー・ユニット「寒い路上から屋内へ;経過報告書」、2000年8月"社会問題研究(大阪府立大学). 48巻2号(未定)(発表予定). (2001)
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[Publications] 岡本祥浩: "イギリス環境交通地域省ソシアルエクスクルージョン・ウニット「野宿者:アセメントレポート」1998年"中京大学商学研究. 25巻2号(未定)(発表予定). (2001)