2002 Fiscal Year Annual Research Report
農水産物のオルタナティブ・トレードによる経済成果と地域開発の比較研究
Project/Area Number |
12572033
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
池上 甲一 近畿大学, 農学部, 教授 (90176082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前潟 光弘 近畿大学, 農学部, 講師 (10268451)
日高 健 近畿大学, 農学部, 助教授 (30309265)
榎 彰徳 近畿大学, 農学部, 助教授 (40122022)
ジン タナンゴナン 近畿大学, 農学部, 助手 (20247969)
鶴田 格 近畿大学, 農学部, 講師 (60340767)
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Keywords | オルタナティブ・トレード / フェア・トレード / 世界貿易 / バナナ / エビ養殖 / WTO / 組合間提携 / 南北問題 |
Research Abstract |
本研究は、実態調査によって従来型の大資本による生産・貿易方式とは異なるもうひとつの貿易(オルタナティブトレード)の社会経済的・環境的意義を解明するとともに、WTOおよびFTAに代表される多国間ないし地域間の自由貿易主義に対する理論的対案の提示を目指している。平成14年度は、12年度及び13年度の研究成果を踏まえて、理論的枠組みの構築と深化、さらなるインテンシブな地域調査、オルタナティブ・トレードにかかわる組織の実態調査をおこなった。バナナ班についてはついては、タイ・ラメー郡の農民組合と村落組織に対する聞き取りを実施したほか、フィリピンにおける多国籍アグリビジネスのバナナ生産・輸出の構造を解明し、それと日本のバナナ貿易とのかかわりや価格形成メカニズムを分析した。エビ班については、タイのスラタニ地区周辺の漁協、加工・物流会社に対する補足調査のほか、台湾とベトナムにおける養殖エビ生産の歴史と現状を調査した。 ラメー郡では、最初に日本の生協との提携生産に取り組んだ第1世代の跡継ぎ世代が無農薬バナナの専業的生産に踏み込んだり、新興の大規模農家を中心に別の組合を設立したりするなどのダイナミックな展開が見られる。堆肥の共同生産グループや養魚池の底泥の利用などの動きも見られ、農法レベルにおける環境持続性への関心は高まっている。台湾の水産養殖漁家はいろいろと対象魚種を変えながら養殖を続けており、さらに大陸への進出やタイ、ベトナム、さらには中米への技術移転の役割を果たしている。ベトナムでは養殖エビの高価格が水田の養魚池化や近代的企業者の新規参入が起こっている。エビの養殖については、環境負荷の軽減を目指すエコシュリンプが始まりつつあるが、生産者支援や物流における投資などトータルとしてのオルタナティブ・トレードの方向性はまだ十分に見通せない。それに対して、フェアトレードを冠するコーヒーや紅茶などはヨーロッパ、とくにイギリスでは市場流通の2〜3%を占めるほどに成長しており、オルタナティブ・トレードの市場化を検討すべき段階にきている。
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[Publications] 池上甲一: "水危機が世界をおびやかす"『21世紀水危機 農からの発想』農文協. 18-31 (2003)
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[Publications] 前潟光弘, 池上甲一, 堀田忠夫 他: "台湾バナナの生産及び輸出の組織活動と価格形成分析"近畿大学農学部紀要. 第35号. 89-110 (2002)
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[Publications] Kodaka Masatosi, Hidaka Takeshi: "Effects and Problems of the integrated Network System of Producer Markets Managed by Kyoto Fishermen's Cooperative Association Union"the Japan Regional Fisheries Society. Vo.42, No.2. 85-102 (2002)
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[Publications] ジン・タナンゴナン, 堀田忠夫 他: "フィリピン・バナナの輸出入システムと日本における価格形成の特徴と分析"近畿大学農学部紀要. 第36号(印刷中). (2003)
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[Publications] 鶴田 格: "南部タイ・チュムポン県での畑作生産"農林業問題研究. 第38巻2号. 46-49 (2002)
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[Publications] 久賀みず保: "対日輸出無農薬バナナ産地の形成と展開"農業経済研究. 別冊. 291-295 (2002)
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[Publications] 日高 健: "都市と漁業-沿岸域利用と交流-"成山堂. 194 (2002)