2002 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀ヨーロッパ印象派を中心とした風景画に描かれた都市景観の視点場調査
Project/Area Number |
12574011
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
萩島 哲 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (70038090)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大貝 彰 豊橋技術科学大学, 建設系, 助教授 (10160433)
趙 世晨 九州大学, 人間環境学研究院, 助教授 (80304848)
有馬 隆文 九州大学, 人間環境学研究院, 助教授 (00232067)
鵤 心治 山口大学, 工学部, 助教授 (30264071)
|
Keywords | 印象派 / 都市的風景画 / 都市景観 / パノラマ景観 / シークエンス景観 / 仰角 / 視点場 |
Research Abstract |
本年度は、19世紀ヨーロッパ印象派の視点場を探索し、視点場と視対象の空間的特徴を検討した。主な内容は、次の3つである。 1.まず、19世紀ヨーロッパの都市的風景画の視点場調査を行い、視点場空間め特徴や視対象の特徴を調べた。「まちの全貌を見渡す景観」、「シンボリックな建造物の景観」、「道路と建築のパースペクティブな景観」、「道路と河川のパースペクティブな景観」、「河川とまちなみの景観」、「港湾の景観」の6つの代表的な典型的構図に分類して調査した。その結果、視点場、視対象の特徴をまとめると、その視点場の多くは、道路の交差点やその近傍のオープンスペースであること、視対象は、まちなみのスカイラインを特徴づける教会が仰角10度程度で望めることがわかった。そのような空間を確保・整備すれば、その場所から通りの方向などを見る「絵になる景観」を得ることができることを明らかにした。 2.次に、ピサロが描いた都市風景画にしぼりその視点場空間を調査した。その結果、ピサロは、特定の地点から多数の絵画を描いており、それらを左右に絵画をつなぎ合わせると、パノラマ的な景観となる絵画を描いていることがわかった。このような景観を可能にした視点場は、港湾や広場に面した建物の上階、河川沿いに面した建物の上階、河川沿いに面した建物の上階であることを明らかにした。 3.ユトリロが描いたモンマルトル地区の絵画46点を調査した。ユトリロは、モンマルトルという小地区内の市街地景観を繰り返し描いている。この描かれた構図には、地区景観を考える上での特徴があり、視点場と主な視対象までの距離は、300m以内の近景、その仰角は、10〜20度であることを、シンボリックな建造物景観では、仰角20〜30度であることなどを明らかにした。さらに、それらの視点場をむすびつける散策ルートを提案した。それを辿ると、そこには空間的リズムがあり、歩きながら連続的に「絵になる景観」がえられることを示した。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] 大貝彰, 萩島哲: "19世紀ヨーロッパ風景画を基準とした都市景観構成要素配置の評価手法の改良と現実景観への適用"日本建築学会技術報告集. 16. 287-292 (2002)
-
[Publications] 宮城光行, 萩島哲, 有馬隆文: "シスレーが描いた絵画にみるモレ・シュル・ロワンの景観"都市・建築学研究. 3. 27-38 (2003)
-
[Publications] 福田太郎, 萩島哲, 有馬隆文: "カナレットが描いた絵画にみるヴェネツィア都市景観の空間的特性"都市・建築学研究. 3. 39-52 (2003)
-
[Publications] 萩島 哲: "都市風景画を読む -19世紀ヨーロッパ印象派の都市景観"九州大学出版会. 173 (2002)