2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12575011
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
立石 庸一 琉球大学, 教育学部, 教授 (80114544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶田 忠 東京大学, 理系・植物園, 助手 (80301117)
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Keywords | 汎熱帯種 / 海流散布 / 分子系統地理学 / 分散 / 分断 / 遺伝子交流 / グンバイヒルガオ / ナガミハマナタマメ |
Research Abstract |
熱帯域に広く分布する汎熱帯種の中には種子の散布を海流に頼っているものが多い。海洋は一般に陸上植物の分布を分断する地理的障壁だが、これらの植物では分散を助け、また遺伝的交流を即す働きをしていると考えられる。汎熱帯種について、核遺伝子等による遺伝マーカーを用い、1)世界を一周するような広域分布種では集団間の遺伝子交流がどの程度行われているか、2)海流散布植物の由来、を考察するのが本研究の目的である。 本年度は、オーストラリア東岸、エクアドル、メキシコ等太平洋沿岸域、南アフリカのインド洋沿岸域、アンゴラ等の大西洋沿岸域で、代表的汎熱帯種のグンバイヒルガオとナガミハマナタマメを探索し、集団サンプリングを行った。特にパナマでは、狭い地峡で分断された海洋間での遺伝的交流の有無を調べる目的で、太平洋岸と大西洋岸の其々で調査した。前年度の試料に加えると、一部の地域を除きほぼ全主要分布域をカバーできた。現地では、個体ごとに生葉の乾燥試料、乾燥標本、花の液浸標本を作成し、種子を収集した。乾燥葉からDNAを抽出し、主にダイレクトシーケンス法により塩基配列を決定し、解析を行った。本年度は、特にグンバイヒルガオで、次のような成果を得た。 核DNAのITS領域では全分布域から7つのハプロタイプが見つかり、うち1つは全世界に分布していた。DFR-B遺伝子の第3イントロンでは変異が多く、これに基づいて、全世界のハプロタイプの遺伝子系統樹を作成した。集団間での移住の頻度を調べた結果、大洋ごとの遺伝的分化と、太平洋の東西で最近遺伝的交流が起こっていることが示された。新大陸太平洋側の集団は単型のハプロタイプにまとまっているが、同一のハプロタイプが大西洋側にも見つかった。遺伝子系統樹全体でみると、新大陸の太平洋側と大西洋側には明瞭な分化が見られると共に、パナマ地峡を通じた遺伝子交流の可能性が示唆された。
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