2001 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ大型類人猿による森林利用の季節変化と熱帯雨林の保全についての研究
Project/Area Number |
12575017
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
古市 剛史 明治学院大学, 一般教育部, 教授 (20212194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 千絵 京都大学, 霊長類研究所, 研修員
伊谷 原一 林原自然科学博物館, 人類学研究部, 部長
金森 正臣 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (70015585)
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Keywords | 熱帯雨林 / 熱帯乾燥林 / 果実生産 / 季節変化 / 植生利用 / 森林保全 / チンパンジー / ボノボ |
Research Abstract |
ウガンダ・カリンズ森林のチンパンジーについては、遊動域内の果実量の変化とチンパンジーの採食パーティのサイズの関係、パ-ティ・サイズとひとつの食物パッチでの滞在時間の関係などのデータを収集し、食物量の季節変化に対する対応方法の分析を進めている。また、発情したメスが一定期間きわめて高頻度に交尾を繰り返すことを発見し、食物環境やメスの遊動パターン、メスの繁殖戦略と関連づけて分析を行っている。DNA分析では、尿から採取したサンプルを用いて、Y染色体の多型部位の検索を行っている。これに成功すれば、調査地全域から集められる糞・尿のサンプルから、各父系集団の遊動域の広がりを調べることができ、森林利用の研究に大きく寄与する。森林保全については、過去の森林伐採の影響についてのモニターリングを進める一方で、エコツーリズムの導入による森林保護のプランを立て、周辺住民を対象とした利害調査を行った。 タンザニアのルクワ地区では、乾季と雨季の2回調査を行い、植生調査、ネスト調査、糞や食痕などの間接証拠の収集、直接観察などを行った。これにより、この地域では乾燥疎開林の中に常緑林や川辺林、イネ科の草原などがパッチ状に分布していること、チンパンジーは乾季には小さなパーティに分かれて非常に広い範囲を遊動して採食効率を上げていること、雨期には大きなパーティを形成し、遊動域も縮小することなどがあきらかになった。また、この地域のチンパンジーのルーツを探るべく、糞からDNAを抽出して分析を進めている。 コンゴ民主共和国のボノボについては、過去のデータを分析してチンパンジーと比較し、生息環境やその季節性、遊動パターン、繁殖戦略、性行動などを関連づけたいくつかの論文を発表した。とくに、季節変動が小さく、食物パッチのサイズが大きいボノボの生息環境が、個体の高い集合性やおだやかなメスの性行動などに結びついていることを明らかにした。
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Research Products
(10 results)
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[Publications] 橋本千絵: "ボノボPHVA準備会議からの報告-生息の現状分析と保護計画の策定に向けて-"霊長類研究. 17・1. 25-29 (2001)
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[Publications] Furuichi, T.: "Extended application of a marked-nest census method to examine seasonal changes in habitat use by chimpanzees"International Journal of Primatol. 22. 913-928 (2001)
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[Publications] Furuichi, T.: "Fruit availability and habitat use by chimpanzees in the Kalinzu Forest, Uganda : Examination of fallback foods"International Journal of Primatol. 22. 929-945 (2001)
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[Publications] Hashimoto, C.: "What factors affect the size of chimpanzee parties in the Kalinzu Forest, Uganda? Examination of fruit abundance and number of estrous females"International Journal of Primatol. 22. 947-959 (2001)
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[Publications] Hashimoto, C.: "Current situation of bonobos in the Luo Reserve, Equateur, D.R. Conogo"In Galdikas, B. et al. (ed.), All Apes Great and Small, vol1: African Apes, Plenum. 83-90 (2002)
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[Publications] 古市剛史: "ボノボとチンパンジーの性行動の再検討〜なぜチンパンジーのメスの方が活発な性行動を見せるのか〜"霊長類研究. 17. 243-257 (2001)
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[Publications] 橋本千絵: "ボノボのメスの集団間移籍と近親交配の回避"霊長類研究. 17. 259-269 (2001)
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[Publications] Furuichi, T: "Why female bonobos (Pan paniscus) are not eager to copulate"In Boesch, C., Marquardt, L. (eds.), Behavioral Diversity of Chimpanzees and Bonobos, Harvard Univ. Press. (印刷中).
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[Publications] 橋本千絵: "オトナたちがら学ぶ性と社会行動〜ボノボの子供の成長過程から〜"第55回日本人類学会大会・第17回日本霊長類学会大会連合大会プロシーディング. (印刷中).
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[Publications] 伊谷原一: "サヴァンナ・ウッドランドと人類進化:サヴァンナ・チンパンジーの生息環境"第55回日本人類学会大会・第17回日本霊長類学会大会連合大会プロシーディング. (印刷中).