2000 Fiscal Year Annual Research Report
病原性赤痢アメーバおよびクリプトスポリジウムの本来の感染様式
Project/Area Number |
12576008
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
神原 廣二 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (20029789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳 哲雄 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (10174541)
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Keywords | 腸管寄生虫症 / 腸管原虫症 / クリプトスポリジウム / 赤痢アメーバ / 伝染様式 / フィリピン / ネパール |
Research Abstract |
今回はクリプトスポリジウム症の常在を裏付けるため,ネパール,フィリピンにおいて健常オーシスト保有者の発見を第一の目的とした。フィリピンではマニラ市スラム地区で,ネパールではカトマンズ市スラム地区と郊外の村落を選んで調査した。赤痢アメーバが狭い居住空間で人が密集状態で生活する場合に,より高率に認められる現象(前回科研結果)は,ネパールでも同様であった。どちらの場合も赤痢アメーバシスト保有者は5-15才の低年令層に多く認められ,しかも女性の方がやや高い。ところがフィリピンでの調査でアメーバ赤痢,肝膿瘍などの有症者をみた場合,成人男性に有意に高いことが示された。すなわち発病に至るには他の要因が必要なことを示している。他の寄生虫保有者では回虫が村落に多く,鞭虫がスラム地区に高い結果が得られた。両種寄生蠕虫の感染型幼虫包蔵卵の性質によるのであろうが詳細は不明。ネパールの寄生蠕虫保有率がマニラスラム地区に比し,低いことは環境要因というより,定期的政府の駆虫政策によるものであろう。クリプトスポリジウム症に関しては血清抗体陽性率カトマンズ・スラム地区23%,郊外村落6%と思いがけず低いものであった。同じ血清抗体試験法を赤道直下のインドネシア,スンバワ島で行い,いずれの村でも50%以上の陽性率を示した結果と大きく違っていた。本来糞便中に排出された感染性オーシストは,高温,乾燥に対し脆弱であり,この結果は私達の考えていたクリプトスポリジウム伝染様式がどこかで間違っており,新しい考え方を導入する必要を示している。さらに予想に反したことは,存在するものとして調査した,健常クリプトスポリジウムオーシスト保有者が1例も検出されなかったことである。
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