2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610005
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
能川 元一 大阪大学, 大学院・人間科学研究科, 助手 (10283714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 哲也 防衛大学校, 助教授
中村 雅之 九州工業大学, 工学部, 助教授 (70207918)
信原 幸弘 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (10180770)
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Keywords | 身体 / 環境 / 状況 / ダイナミック・システム / コネクショニズム / 進化 |
Research Abstract |
本年度の主たる成果は、認知科学における新しい動向がはらむ諸論点やそれらの間にあるつながりについて共通の認識を形成したことであった。 今日認知科学において新たな知見を産み出している領域として、われわれは進化論(生物学)的アプローチ、「状況学習」理論、システム理論の3つに注目した。これら3つのアプローチに共通している洞察は 1認知主体は身体や環境を含む「状況」のなかに位置づけられた存在である、すなわち認知主体とは身体と環境とがつくりあげるシステムである 2このシステムは時間のなかで発展するダイナミックなシステムである と要約することができる。この観点からみるなら、進化論的アプローチや「状況学習」理論は認知主体と環境との相互作用、状況への主体の埋め込みを具体的に記述し、あるいはモデル化する試みであり、システム理論は認知主体をシステムとしてとらえるという見方に理論的基礎を与えることにより第三世代の認知科学に一種の「共通言語」を与える試みである、と位置づけることができる。 以上をふまえて、われわれが注目した3つのアプローチが古典的な枠組みを越えるものとなるか否かは、非個体主義的な(システム論的な)観点から認知主体の存在論を明確にすること、そして「表象」概念を再構成しなおすこと、またコネクショニズムやニューラル・ネットのモデルを非個体主義な観点から解釈しなおすことが必要であろう、という結論に達した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 河野哲也: "「場」から「過程」へ:メルロニポンティによる"ホワイトヘット""プロセス思想. 9号. 34-47 (2000)
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[Publications] 河野哲也: "J.J.ギブソンとメルロニポンティの実在論"メルロニポンティ研究. 6号. 64-83 (2001)
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[Publications] 能川元一: "認知主体の身体化-Enaction理論とメルロニポンティ"メルロニポンティ研究. 6号. 48-63 (2001)
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[Publications] 信原幸弘: "コネクショニズムと消去主義"科学哲学. 33巻2号. 1-14 (2000)
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[Publications] 河野哲也: "メルロニポンティの意味論"創文社. 275 (2000)
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[Publications] 信原幸弘: "考える脳・考えない脳"講談社. 211 (2000)