2000 Fiscal Year Annual Research Report
初期ギリシア哲学における認識論的観点からの人間把握について
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12610009
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
三浦 要 十文字学園女子大学, 社会情報学部, 助教授 (20222317)
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Keywords | パルメニデス / 生成と時間 / 感覚と知性 |
Research Abstract |
本年度は、特にエレア派のパルメニデスの思想を取り上げ、認識に関わる主体が認識対象との関係でどのように捉えられているのかを考察することから始めた。その際の手続きとして、まず、認識対象としての「あるもの」の内実を特に生成と時間の観点から見てみた。彼の「あるもの」における未来と過去の両面からの生成の否定は、その時間的持続を完全に否定することにつながる。これが無時間的な「ある」である。もしそれが彼により自覚され積極的に主張されていたとすれば、彼は、哲学史上初めて「無時間的・無時制的真理」を発見した人物となる。しかし、そのテクストを詳細に検討するとそう簡単に断言できない。「あるもの」に生滅を認めないことにより、それは不変となったが、持続的永遠の存在ではありえても、それ以上のものとはなりえていない。無時間性への志向性を内包しながらも、時間概念を完全に「あるもの」から払拭してはいなかったと言える。 そして、認識対象がこのように時間内存在であるとすれば、それを認識する主体の能力に関しても、パルメニデスが知性(こころ)を感覚と完全に区別された上位の能力として措定している、という「常識的」理解も、再考の余地がでてくる。ホメロス以来「こころ」(noos)は視覚と結びついた直観的洞察力という機能を持っていたが、パルメニデスにおいてはそこに論理的推論という新たな機能が加わっている。しかし、それらが感覚と無関係であるかといえばそうではない。彼の詩を検討すれば、そこに感覚と知性の協働的・相補的な関係を見て取ることができる。この点について、そして他の思想家との影響関係については更に今後検討しなくてはならない。
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