2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610010
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
巻田 悦郎 東京理科大学, 経営学部・経営学科, 講師 (80212207)
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Keywords | ガダマー / 解釈学 / 事柄 / ハイデガー / 問答 / 対話 / 現象学 / プラトン |
Research Abstract |
研究計画では本年度、計画している著作の二つの章にあたる論文を準備し作成することになっていた。 そのうちの一つは、初期ガダマーの古代ギリシアのテクスト解釈がのちのガダマーの哲学的解釈学にどのようにつながっていったかを、二つの時期を比較しつつ考察するものである。ガダマーは「アリストテレス『哲学への勧め』」(1928年)と教授資格論文『プラトンの問答術的倫理学』(31年)で、テクストで論じられている事柄を重視する現象学的・即事的な解釈をとったが、この解釈様式は、事柄と解釈者との関係を逆転させながらも、のちの『真理と方法』(60年)で一般化されて、テクストをその成立状況に還元する歴史主義的解釈学を批判する哲学的解釈学へと発展する。同時に、現象学的解釈の対象となった、事柄において了解し合わないソフィストに対してプラトンが唱えた問答術は、のちに、精神科学の了解過程のモデルとして適用された。この研究は11月に日本現象学会研究会(東京大学)で「ガダマーの現象学的解釈」として口頭で発表したが、論文としてどこに発表されるかは未定である。 もう一つのテーマは、ハイデガーがガダマーの思想の形成にどれほど、どのような仕方で影響したかを、伝記的出来事やハイデガーの転回などを考慮して、二○年代から六〇年代初頭まで歴史的に記述しようとするものである。これは三月末の解釈学シンポジウム「ガダマー再考」(三重県ゆずりは荘)において「ハイデガーとガダマー」と題して発表することが決まっており、現在、その準備をしている。コルトマンやドスタルなどのアメリカのガダマー研究者がこの点について90年代にかなり解明していることが判明している。これは日本ディルタイ協会の『ディルタイ研究』に掲載される予定である。
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