2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610011
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
加藤 泰史 南山大学, 外国語学部, 教授 (90183780)
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Keywords | 相互承認 / 相互人格性理論 / 良心 / カント哲学 / 相互主観性理論 / 環境倫理学 |
Research Abstract |
初期フィヒテにおいてドイツ語の「Anerkennung」という言葉が「承認」という意味を獲得することで「人格の相互承認」という思想が「相互承認論」として確立され、「相互承認」という用語が哲学の専門用語となった。本研究では、初期フィヒテの「相互人格性理論」の構造分析を踏まえながら、その現代的射程と問題点を以下のように明らかにした。 1、フィヒテの「相互人格性理論」は『自然法の基礎』において確立されるが、このことからも明らかなように、「相互承認」の問題は法・制度・国家などのそれと密接に連関している。こうした観点からすると、「相互承認論」の原型はスピノザの『神学・政治論』の議論にもとめることができる。その意味では「相互承認論」を近代ヨーロッパ哲学に固有の思想とみなしうる。 2、ヘーゲルがフィヒテの「相互承認論」を受け継いでゆく。『精神現象学』ではそれを理論的に整理するが、それと同時にヘーゲルは『法の哲学』ではむしろ「相互承認」のあり方を「家族」・「市民社会」・「国家」という三つの段階ないしは場面に即して具体的に分析しようと試みる。こうした試みは、現代ドイツのA.ホネットなどにも影響を及ぼして引き継がれている。 3、現代哲学について言うと、「相互承認」の問題は英米では心理学において重要な意味を持つとともに、ドイツでは環境倫理学において重要な議論を提供しつつある。 4、しかしながら、「相互承認」の可能性を原理的に考察すると、その核心には「良心」の問題が伏在していることが明らかになった。この問題にとって最も示唆に富む議論を提供しているのがカントである。それは「相互承認」の権利問題と位置づけることができると思う。
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[Publications] 加藤泰史: "公共性のユートピア-「理性の公共化」と「都市的」空間の問題-"哲学雑誌. 第787号. 36-56 (2002)
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[Publications] 加藤泰史: "「相互人格性理論」の陥穽"現象学年報. 第16号. 23-46 (2000)
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[Publications] 加藤泰史: "環境倫理学における「承認」の問題"中部哲学年報. 第33号. 75-91 (2001)
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[Publications] 加藤泰史: "渡邊二郎監修『西洋哲学史の再構築に向けて』(共著)"昭和堂. 561 (2000)
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[Publications] 加藤泰史: "シェーンリッヒ・加藤泰史他編『カント・現代の論争に生きる・下』(共編著)"理想社. 454 (2000)
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[Publications] 加藤泰史: "坂部恵他編『カント全集2 前批判期論集II』(共著)"岩波書店. 589 (2000)
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[Publications] 加藤泰史: "伊原弘・小島毅編『知識人の諸相』(共著)"勉誠出版. 251 (2001)
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[Publications] 加藤泰史: "坂部恵他編『カント全集17 論理学・教育学』(共著)"岩波書店. 455 (2001)
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[Publications] Yasushi Kato: "A.Brandt et al. (Hg.) Vernunft und Leidenschaft"Landensfug & Hausrecht Verlag(Gottingen). 179 (2002)