2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610014
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中西 啓子 新潟大学, 人文学部, 教授 (00143743)
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Keywords | 宗密 / 法琳 / 五戒と五常 / 一気 / 太極 / 唐代の三教論 |
Research Abstract |
宗密の三教論においては、第一に「一心」と「一気(元気)」の問題、第二に「五戒」と「五常」の問題が重要なポイントとなる。今年度はおもに第二の問題について考察し、ひろく唐代の三教論のなかでこの問題が果たしていた役割を追求した。とりあげたのは昨年度に続いて初唐の法琳である。法琳の三教論では出世間の教にほかならぬ仏教が世間的政治的な効用においても儒道二教を凌駕すると説き、その論点のひとつとして五戒・五常の問題をとりあげ、不殺生を教える五戒のほうが治政においても五常に優越すると言う。これは五戒の政治的効用を最も強調した議論であり、やや遅れる道世『法苑珠林』(巻八八)の議論にも影響していると思われる。このような観点から法琳の三教論および彼の周辺の諸問題を論文二篇「法琳の三教論によせて」(『中国思想史研究』第24号)・「法琳〓記」(『比較宗教思想研究』第二輯)に纏めておいた。宗密は五戒・五常の一致を強調する段階にとどまり法琳のように五戒の優越を説くのではないが、早くは北魏の偽経『提謂経』に始まるとされるこの問題を彼の三教論のなかに摂取しているわけである。第一の問題については、宗密は『老子』(河上公注)と『周易』にもとづいて一気を儒道二教の基本原理とするが、とくに注目しておきたいのは『周易』の太極を問題にし、易緯(正しくは孝経緯)の五運説を導入しながら太極を一気(元気)の展開と見なしていることである。この議論は三教論の流れでは北周道安の「二教論」に淵源し、法琳『弁正論』、神清『北山録』にも継承されていることが確認される。今後はこうした唐代の三教論と『周易』との関連について考察したのち、宗密の主著『円覚経大疏』同『大疏紗』から「原人論」へと集約される三教論の性格を纏めてゆくこととする。
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Research Products
(2 results)