タントラヴァールッティカ聖伝章の研究

2000 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 12610019
• Research Institution: 佐賀医科大学
• Principal Investigator: 針貝 邦生 佐賀医科大学, 医学部, 助教授 (50124813)
• Keywords: タントラヴァールッティカ / 聖伝章 / クマーリラ / ヴィジャヤー

Research Abstract

平成12年度は次のように研究を遂行した。『タントラヴァールッティカ』の括弧内の四つの写本(1.Bodleian Library(Oxford),2.India Office Library(London),3.Library of Asiatic Society(Culcatta),4.Institute of Baroda(Baroda)の各図書館の所蔵写本)によって、その「聖伝章」第1から第3までの三論題の原典再構成を試みた。その結果従来の『タントラヴァールッティカ』の出版本(Benares Sanskrit Series本とAnandasrama Sanskrit Series本)の異読(variant readings)と誤謬を多数指摘することができたことは大きな収穫であった。<誤謬>の中には出版本『タントラヴァールッティカ』のテキスト自体に脱落している部分が数行にわたるという決定的な誤謬の指摘も含まれる。その上でNyayasudha,Ajita,Vijaya,Tantracintamaniといった注釈類を活用して翻訳を行なった。しかしこれらの異読や誤謬を公表する作業と翻訳の出版は今後の課題として残された。特にテキスト校訂の結果はその公表が学界にとって期待されると考える。他方、従来未出版であった『タントラヴァールッティカ』注釈Ajitaとその注釈Vijaya復注の、『タントラヴァールッティカ』「聖伝章」の最後の二論題(文法学論題と形相論題)の出版を遂行することができた。それにより『タントラヴァールッティカ』の第1巻第2章と第3章までのVijaya復注出版が完結した。この作業は今後『タントラヴァールッティカ』「聖伝章」の研究に大いに稗益するものであることが期待される。科学研究費により購入したパソコンおよび書籍はそれぞれテキストの原典再構成と翻訳にさいして多いに有益であった。

Research Products

• [Publications] 針貝邦生: "ヴェーダの現世利益的祭式の弁証論(2)"戸崎宏正博士古稀記念論文集『インドの文化と論理』. 585-617 (2000)
• [Publications] Harikai Kunio: "Vijaya, the Commentary on Ajita (6)"佐賀医科大学一般教育紀要. 19. 1-49 (2000)